病院が生き残る道はどこにあるか(1)

平成15年から特定機能病院で行われていたDPC:Diagnosis Procedure Combination(包括支払い制度)が平成16年から平成18年までの2年間、民間病院を加えた形で試験的に運用されようとしている。
この制度により入院の診療報酬は、主とする治療を行う一病名(診断病名)によって1日あたりの報酬額が決まっており、この額は、入院日数によって増減する事になる。
一日あたりの報酬額が決まっていると言う事は、例えば、Aという治療を行った人と、AとBと言う治療を行った人も診断病名が同じで入院日数が同じであれば一日あたりの病院が受け取る報酬額は同じと言う制度である。
(治療に関しては、全て包括されるわけではなく、手術等は除外される。)
ですから、今までのように入院患者さんに、検査や投薬、注射をすればそのまま報酬として病院が受け取る事はなくなるわけです。

ここから本題です。では生き残る病院は、どのような病院なのか?
まず、病院も根本的には会社と同じですから、利益を上げなければ設備投資、或いは業務拡大ができません。利益を上げるために、優秀なスタッフを集め、最新の設備を備え、最新の治療を行えば良いだろうと言う結論になるかもしれませんが、話はそんなに簡単ではありません。

一人の患者さんを入院させた場合、濃厚な最新機器、最新技術で治療を行って入院期間を短くすれば利益があがると言う単純な法則であればいいのですが、例えばAという治療薬は、高価であるが早期に効果が出て入院日数が短い治療法と、Bと言う安価な治療薬を使って治療を行いて入院期間が少し長くなった治療法と比較した場合、Bを選択した方が計算すると病院として収益が上がるケースも出てくるのです。
また同じ治療を、年俸の高い優秀なスタッフを雇用して行った場合も同様に、退院までの患者さんの治療結果が同じであれば、病院にとって収支はマイナスとなります。ですからある程度の技術レベルを持っていれば、安いスタッフを雇用した方が病院にとって得策と言えます。なぜなら、優秀なスタッフが患者さんの治療に当たった場合、効率よく仕事を行い、スタッフの治療にあたる時間が減ったとしてもその減った分を年俸から差し引くわけには行きません。その分を他の治療にあたる時間に当てようとしても、ベット数の関係から治療する人数には限界がありますのでどこかで仕事量はプラトーになってしまうのです。

もし職員構成を考えるなら、他職員の仕事の時間配分を考える事ができ、また仕事の不足するところを補える優秀な人が1人いれば、それ以外は、ある程度の能力を持った職員で構成することが良いと思われます。ただし、その優秀なスタッフばかりに負担がかかりすぎそれで辞めてしまっては困りますので、他の職員からそのスタッフの代わりが務まるように絶えず次を育てていく必要があります。それは、病院をマネジメントするものの責務でしょう。

厚生労働省の方針では、診断群分類毎の診療報酬の見直しを行うということなので、大部分の病院で治療日数を短縮し、治療にかかる経費を削減すれば、その病名に対する診療報酬は下がっていくため、極端な話、治療に要する費用は限りなく限界に近づき、DPCに参加する病院の半数の病院は平均在院日数を超えるため、治療の良し悪しは別にして患者さんを入院させて治療を行えば赤字になる事になります。ただ実際そうなるかは厚生労働省のさじ加減一つなので将来を予想できないのですが、今述べた話は極端な話なのですが、でも今ある半分以上の病院は、治療や、業務、人員配置を含め見直していかないと経営危機に陥る可能性があるのです。ただし、非効率な治療を行っている病院が淘汰されていけば、効率よく病院運営を行っている病院が生き残ることになるのでしょう。
でも効率の良い経営を行なっている病院が全て患者さんにとって良い病院と言うことにはなりません。良い医療を提供する病院が全て効率的に運営が行えるかと言えばそうではないことも事実です。

この制度で、日本の医療費の削減はしやすくなることは間違いありません。でも、全ての国民に等しく上質な医療を提供できる環境になるかは少し疑問なところです。