柳下イズムと松本イズム

昨日の試合で、今季の柳下監督と松本監督との戦いは終わった。

 両者ともJ1での監督経験があり、若手育成にも評価が高い。
 
 その2人の戦いの違いを個人的な感想であるがまとめてみた。ただし、断っておくがこの感想は取材などは当然していなくあくまでも私が知りえた情報内で書いたものである。

 後1試合を残して、

 札幌 16勝12分け15敗 勝ち点 60 得失点差 -4 総得点 52 失点 56
 鳥栖 14勝10分け19敗 勝ち点 52 得失点差 +1 総得点 58 失点 57

 札幌は6位以内確保、鳥栖は7位から10位以内のどれかの可能性がある。

 結果を見れば、似たような成績を残した。そして、両チームとも主体はJ1経験者を中心とし、その中に若手を加えチームを作ってきた。選手の能力も同程度である。しかし、お互いの監督の試合マネジメントは異なっていった。

 私が見た試合は、3月と9月の2試合であったが、両ゲームとも鳥栖の勝ちゲームであった。
 去年、札幌が、勝敗を度外視しチームの育成を目指したとき、鳥栖の松本監督は、「勝利を目指さないチームは有り得ない」というコメントを出したことを覚えている。

 それが、チームの選手を使って最大限の効果を生むための試合運びをする。守備を重視しセンターライン付近でプレッシャーを掛けボールを奪ったら直ぐに全員が相手ゴール目指すと言う戦い方である。
 それに対して札幌はポゼションを重視しながら、相手からボールを奪うために数的優位を作り出す。そのためボール周囲に選手が固まりやすくなる。それに対して鳥栖は、ハッキリ言ってしまえばカウンターサッカーなので、札幌側の開いたスペースに必ず選手が走ると言う約束があるためにそちらにボールを動かす事が多く札幌の選手の運動量が多くなる結果となる。
 
 また、札幌は守備時に固まってしまうため攻撃に移るとき狭い範囲のパス交換になりやすくなる。そのためパスの精度と選手間の意思の疎通が大変重要となる。
 その能力値が相対的に低いため、パスが繋がらず相手に奪われることが多くなる。札幌の攻撃が上手くいくときは、そのパス交換が4回から5回繋がるときである。
 
 片や鳥栖は、スペースに走りこむ選手がおり、そこに正確なロングパスを出す選手がいればある程度攻撃できる。その中心が、セレッソに移籍した宮原選手であった。この選手は、相対的に運動量は無いが、視野が広いことと正確なロングパスを出すことができ、鳥栖にとってキーマンであった。後半せんその仕組みが上手くいき好調だったのに、宮原選手が移籍すると共に成績が下降してしまった。
 もし、そのままであったら今の成績は逆転していた思う。

 強引に纏めてみると、札幌は、選手個々の力が無ければ中々勝つ事が出来ないチームであり、鳥栖は、そこそこの才能と対戦相手のチームと比べて全体の運動能力が優っていれば、勝ちを拾っていけるチームと言える。

 来年に向けて、札幌はやはり選手個々の能力が高め無ければいけない。守備の対応にしても今の倍以上の範囲をカバーできなければパスサッカーは完成できないだろう。言い換えれば、守備範囲が狭いために味方の距離が相対的に近くなるため攻撃に移るためのパス出す相手の選択肢が少なくなってしまうからである。
 今のサッカーは、やはり守備が重要である

 翻って鳥栖は、中盤の王様が必要である。しかしこれも、来季に向けて補強した選手にあわしてチームを作ってくると思われるため、戦術はがらりと変わる可能性がある。
 鳥栖は、スタミナが充分であるため、このまま中盤と攻撃にもう一枚核が加われば面白いチームになりそうだ。守備に関しては、両チームとももう一つと言わざるおえない。
 両チームに横浜FMの中澤選手レベルの選手がいればもっと失点は少なくなっただろう。やはりここには、運動能力が高く更に危機察知能力が高い選手がいなければどうしても90分バランスを保つことができない。これに関しては生まれつきの能力が物を言うと思われ、高校生からこの能力に優れた選手を連れてきて育てるか、他チームからの補強が考えられるが、このクラスの選手がJ2に来るとは思われず、やはり外国籍選手の補強が成功する確率が高そうである。

 両チームとも、このまま順調に成長していければ良いのだが、強いチームを作るにはそれなりに運営資金も必要だし、良い選手は、当然上のチームに引き抜かれていく。
 机上の空論のように全てが上手くいくことはない。与えられた選手でいかに勝つチームを作り上げるかが監督の手腕と言える。