病院が危ない

 『療養病床ある病院、7割が収入減 新診療報酬で』(asahi.com)
 これは、病院で医療事故が頻発して危ないと言うことではなく、経営が危ないと言う話である。

 以前も書いたが、厚生労働省は、未来の医療費の巨大な赤字予想をどうやって解消すべきか頭を凝らしている。それがここ何年かの医療改革である。

 まず初めに、介護保険の開始である。お年寄りの介護に関わる部分を介護保険に移し、別枠で国民から保険料を徴収することで、今まで医療保険で賄っていたものを減らそうとした。

 そして、次に医療保険の支払い基準をDPCと呼ばれる包括化に移行した。(これは、全ての医療機関が対象ではなく、ある一定の基準を満たした病院がこの制度の対象となっている。)

 ここ最近の話では、4月に診療報酬の改定が行われ、また10月からは、収入の多い老人から負担率をアップするようになった。

 診療報酬の改定は、大きなものは4年後と、小さなものは、2年ごとに行われており、薬価や医療材料費などは徐々に引き下げられてきていた。それを考えると、ここ数年、病院の利益は減少傾向にあり、ここに来て4月改正の診療報酬の引き下げは、病院の収支がゼロかマイナスになったということである。その中でもっとも痛手を受けたのが、老人病院と一般に言われている、介護療養型の病床を持つ病院である。

 しかしこの介護療養型の病院も、昔は一般病院であった。しかし、医療の中身が薄く、治療を積極的に行っていない病院を対象に介護療養型の病院に移行するように厚労省はもっていった経緯がある。それも、10数年前のことである。
 そして、その移行させた病院を、今度は、潰そうと考えているのである。

 しかし、これも実は問題があり、一般病院で治療が終わった患者の引き受け先が無くなってしまうという現実問題がある。厚労省の考えでは、治療が終わり、在宅で生活できるような人は家に帰れると考えているが、実際はそうではない。家に帰り、自分で食事を作ったり身の回りのことが出来ない人もいるし、そもそも帰る場所がない人もいる。そう言った人は、今の介護保険で療養することになるのだが、その受け皿は今の所充分に足りているとはいえない。

 ここでの問題は、受け入れ先が充分ではない状況で、病院が少なくなれば、現場が混乱することを役人は理解していない所にあるのではないだろうか。

 しかし、この流れは直ぐには止まらない。お役所仕事は、不都合な状況が起きたとしても直ぐに針路変更はしないからである。この先、何年かは、病人にとって生きづらい世の中になっていくのは間違いない。本当に健康で生きるように努力しなければならない時代になったのだ。