発明は技術者の夢

元日立社員の発明による対価の裁判判決が出た。

 その対価1億6千万円。これは、金額と言うよりも、自身の技術者としての名が残る事が幸せなのではないだろうか。
 
 普通一般に、企業内の技術者の特許は、その会社に属したものとして評価され、その発明を行った技術者の名前は表に出てこないものである。優れた業績を残せばそれなりに評価を受けるが、その専門分野内の評価で終わることのほうが多い。
 そのようにして、企業で生き、定年で去っていく方が多いのだろう。そう言った意味で、島津製作所の田中さんは、非常にラッキーだった。

 技術者は、世間一般では得てして正当な評価を受けにくいものである。その特異的才能から、オタク扱いされ、昼夜を問わず仕事をするため風貌は乱れがちである。その容姿から更に変人扱いされやすいものである。
 そのため、企業内では一種特殊な扱いを受け、普通の出世レースからは外れていることが多い。そのため変人扱いしている方が、社内では上司になり社長になり命令するほうになってしまうのである。
 
 普通に考えれば、変人扱いしたものを正当に評価することができるわけはない。更に技術者が年齢により能力が下がれば評価は下がるし、元々部下の管理能力が無ければ、管理者として出世していくはずも無い。そのようになった場合、会社にとっては不要な存在になってしまう。

 そして、人知れず去ることになってしまうのである。
 
 今回の元社員の方がこのような存在だったといっているのではない。

 普通一般に、技術者の大部分は、自己満足で終わることが多いと思うのだがどうだろう。大金を貰うような発明をして技術者としての生涯を終えたいと願いながら、普通に人生を終えてしまうことのほうが普通だから。夢を実現された今回の方には心から祝福をしたい。