2万回の復活

空は青く広がっている。まるで深いガラスでできた水槽である。あの奥に真っ暗な真空の宇宙空間が広がっていることなど想像すらできない。

 
 死は眠りである。そして毎朝人間は復活の儀式をしている。

 そう考えるようになったのは、何時ごろだろうか?忘れてしまった。それも年老いたせいだろう。

 若い頃は、何時か自分が死ぬこと気づかなかった。毎日次の日が来ることを考え大人になろうと日々過ごしていた。それがいつの間にかその過ぎ去る時間の速さが残りのろうそくの芯のような気持ちを覚えるようになった。
 それでも日常の生活を過ごしていれば、時の経つのを忘れいつの間にか眠りに就きそして自然に朝を迎える生活を繰り返しているのだった。

 人は眠りに就くとき意識を失う。その間の記憶を留めることは無い。確かに夢見る時はある。しかしそれが何時まで心に残るということは少ない。
 死は眠りと同じである。

 そして朝の目覚めは、復活の儀式を繰り返しているのである。そうだとすれば、朝の目覚めは、奇跡を毎日自分で経験していることに他ならない。

 自分は眠りから覚めたと思っても、端から見ればそれは奇跡なのである。しかし、自分が死んだことを認識していなければ、なんら朝の目覚めと変わらないわけである。

 しかしながらそう思いながら目覚めることは無い。目覚めは一瞬で引き起こされ人間の体として活動を開始するのである。