空には、大きく厚い雲が群れを成して浮かんでいる。一つ一つが自分の存在を誇示するかのように。
 何時降るかわからない空模様のした、風はまだ冷たい。

 
 自分の顔を触ってみる。

 額、その下にある骨の感触が指の腹に伝わる。目の周囲、これも眼窩のくぼみが指先でなぞれるほどはっきり判る。頬、この辺りは、脂肪と筋肉の感触がある。一段高い頬骨の辺りが骨として指先に感じられる部分である。顎、この辺りは人によるだろうが下顎のとがった感触などは良くわかる。

 人間の顔は、硬い骨の上にゴムのように感じる皮膚が被さった状態である。マネキンの顔の表面が人間の皮膚に似たゴムで作られていたとしても、生きた人間の顔には見えない。 
 
 それは、顔に張り付く筋肉が微妙に変化するからである。先程自分の顔で骨の感触が得られた顔の半分の面積以外の部分は、表面に筋肉が張り付いている。
 その半分の面積の動きと、目の動きが人間の顔に精気を宿らせているのだ。

 実際のところ、人間の見た目は、顔の造作のバランスによるところが大きい。無駄にある部分が大きくバランスを損なっていれば、人に良い印象を与えることができない。
 しかし、本当のところを言えば、顔の表面の顔と筋肉をそぎ落とせば骨である。もしそれが普通だとしたら、骸骨が化粧をしていると考えたら噴出しそうになってしまった。