心の闇

空のはるか上空に綿埃のような雲が浮かび、全体が薄く化粧をしている。本当の青空は広がっていない。
 このまま晴れて、日中は相当気温が高くなりそうである。

 
 秋葉原の事件。どうも地名からオタクの犯罪として語られているが、そうではなさそう。
 色々な情報では、派遣という身分に落ちた自分の境遇を悲観しての犯行らしい。

 と書けば一行で犯行の理由が付けられてしまうが、そうでもないのだろう。何かに触発されたのかもしれないし、高校で挫折したらしいのでその頃から今回のような事件を起こしてやろうと考えていたのかもしれない。

 そのことも、これから犯人が自供を始めて語られたとしても、本当の事実にはならないだろう。その犯罪を犯した心の闇や、その時の発作的な考えは本人にも説明しづらいことだと思う。
 もしかしたらそのことを常日頃空想し生きていることなど、人間であるならありそうなことである。

 しかし、このような事件がおきると困ることは、情報系の仕事をしている人間が一律このような考えを持っていると捉えられることである。
 確かに、情報系の人間は、おとなしい人が多い。それは、日頃から人と係わることが少ない環境にいるという状況がある。そのため無口に見える人が多く、その人が急に多弁になると不思議に思うことがある。
 そして、普通の人たちから、変人扱いされやすくなる。
 
 そう考えれば、モニターに向かってぶつぶつ独り言をつぶやきながらキーボードを叩く姿は、誰かに見られていれば別世界の人間にしか見られない。

 人間が全ての感情を露にして生きていることはまれである。一見普通そうに見えるように皆多かれ少なかれ努力をしている。
 人から良く見られようとするのは人間の本能である。しかし、その穏やかな表情の下に何かを隠しているものである。
 
 それは、待遇の不満であったり、人間関係の不満であったり色々なことである。それを全て表に出して生きることなど不可能だから我慢して生きているのである。

 これから益々生きづらくなることは間違いない。この騒ぎも一段落すれば何も無かったように平気で満員電車に乗り込み、まるで働きアリのように交差点を渡るのだろう。

 しかし、心の奥底で、群れの中から何時また狂った人間が現れるのかを考えながら生活していくのだろう。