とこや

 外は時折強い風が吹いている。その風に吹かれ落ち葉が道路を転がっていく。

 空は曇り時折雨粒が落ちてくる。黒い雨雲が頭上にあるため何時雨が降り出してもおかしくない天気である。

 少し髪が伸びてきた、床屋に行こうと思うが中々億劫で仕方ない。以前は、理容院に予約していっていたが、その店も経営者が変わり融通が利かず自分の都合に合わせた予約が出来なくなってしまった。

 そのため、今ではもっぱら散髪はカット専門の店を利用している。そして店に入り出て来るまで10分程度と時間効率は極めてよい。髪型も気にしなければ、特にどうと言うことも無い。

 ただし、店によって散髪に電動カミソリを多用するところがあるが、そういった店は行かないようにしている。

 何故なら、電動カミソリは鋏と違い切った後の毛先がほつれるようになる感じがする。そのため手触りの感触の悪さが数日続くからである。カット専門の店でもきちんと鋏を使ってやってくれるところもあるのでもっぱらそこを利用している。

 まあ、こだわらないと言ってもそういうところはこだわるのも客の心理かもしれない。だからと言って街の床屋さんが全てそれに変わっていくのも良し悪しである。今のように床屋も予約制で無かった頃は、何人も店の中で散髪の順番を待ち、その間漫画の本を読むのが床屋へ行く楽しみの一つであった。あの頃は、今のように最新刊が常にあるような状況ではなく、一月遅れや、いつ出たのか分からないような本が並んでいた。

 そういった店も、年月が経てば当然経営者も変わり、その後を若い人がやっても、昨今のカット専門の店の進出と合わせ、徐々に廃業していく。床屋で儲ける事は不可能な時代になってしまったのだろう。

 あのやめた床屋のおじさんは、今頃何をしているのだろうか?