選挙

 曇り、今にも雨が降りそうな朝である。気温も今までの暑さが嘘のようにひんやりしている。風はない。

 参議院選挙も近いため、道路脇には多くの政党の立看板が立ち始めた。その中で一番勢いがあるのが、「幸福実現党」そして「共産党」「公明党」「自民党」の順で、政権政党の「民主党」の看板が少ない。更に組織としては、小さくなりすぎた「社民党」の看板は見かけることはない。

 その母体となる組織の選挙に掛ける資金力の差があると言える。例えば宗教法人が税制面で優遇されるわけであるが、その優遇された部分で選挙活動ができるならそれは税金を掛けるべきだろう。表向きは、宗教法人と政党は独立した関係としているが、実際は誰もが同じとしているのだから、やはり宗教法人に対する税制のあり方を論じる必要が有るだろう。

 さらに、各立て看板が訴える内容の空虚さが目立つとも言える。共産党などは、「後期高齢者医療を廃止させます」と堂々と訴えているが、共産党一党では廃止するのは難しいだろう。それを堂々と言い切るその言い方が、何か見るものの心を冷えさせる。

 更に、自民党などは、「北海道を強くする」と言い切ってしまう。今までの自民党は、北海道をどうしていたのだろうと問いたくなる。そんなに強くしなければならないような状態になるまで政権政党だった自民党は、見放していたのだろうかと問いたくなる。

 これも前与党だった弱点の一つだろう。今更そんなことを言われてもというのと、政権を担当したときにやってくれれば、自民党が政権の座から転落することは無かっただろう言う思いが自然と沸き起こる。

 そしてもう一つ言うと、今回の選挙の顔は、谷垣さんでは無く、小泉進次郎さんらしい。自民党の若返り政策が吉と出るだろうか。

 最後に、やはり一番声高に政策を述べなければならない民主党であるが、菅総理が就任時に口走った「消費税10%」という発言が、今はトーンダウンしている。選挙を戦う上で不利だという考えがあって積極的に訴えないということなのだろうが、それは、責任政党としての自覚が不充分である。

 それも、大蔵省の口車に乗って消費税を訴えて散っていった、日本新党の細川さん、自民党の橋本さんの記憶がちらついているのだろう。

 与党になって、その発言の責任について問われることが多くなり、民主党議員全体の腰が引けた状態になってしまったのだろう。

 だけれども、今までの自民党がどうして政権交代の憂き目にあったのかその歴史を検討する必要がある。一番の原因は、自民党という組織が経団連などの古い組織の協力で成り立っていたものが、徐々にその組織が弱体化したことに原因があるだろう。

 色々な時代の変化に古い政党が舵取りを間違えた結果が今の状況である。更に言えば、民主党なども労組の支援を受けてはいるが、その労働組合自体も年々組織の弱体化が進んでいる。衆議院選挙で勝てた理由は、支持政党なしの浮動層が民主党に投票した結果である。

 

 その浮動層が何時も民主党に投票してくれるとは限らない。そのことが近年の日本の政治を弱体化させている一つの要因だろう。

 なぜなら、浮動層相手に得票をお願いするなら、間違ってもその層が不利益に成るような公約を述べることが出来ない。そのため政策は大衆迎合的な政策ばかりに成る。

 昔のようにある特定の組織の支援を受け選挙を行うなら、選挙後はその特定団体の利益に成る政策を組めば次の選挙も安泰だったため、ある意味利益誘導が分かりやすかった。それによる弊害も多いのだが。

 今後、ますます選挙は水物になっていくだろう。そして誰もが口当たりの良い政策を言うように成る。しかし、経済的に厳しい状況にある今、打出の小槌を振っても金がでない。そうすると政権を取ると常に有権者から不満をぶつけられることに成る。結局めまぐるしく政権交代を繰り返すように成るのだろう。