札幌 vs 東京V

 台風一過の夜札幌ドームで行われた試合、残念ながら見に行けずCSで観戦。

 

 試合は、札幌の選手が試合後言っていたように、J2では屈指のボール扱いをする東京Vにボールを回され、ボールを奪うために札幌の選手はフィールドを走り回る。

 これだけ走らされれば、何時か燃料切れが来るのは時間の問題で、それが先に札幌に来るのではないかと心配してみていたが、先に動きが止まったのは、東京Vの方だった。

 東京Vは、休みが1日少なく、更に札幌の移動が有り、前の試合7点も取る激しい攻撃をしたチームである。それに比べ札幌の選手は移動が無い分、疲労の蓄積は少なかっただろう。

 

 試合は、開始早々、内村選手のパスから抜け出したフリーの古田選手が鮮やかにゴールを決めて札幌が先制する上々の出だしだったが、その後すぐ東京Vに素早い攻撃から、河野選手に札幌の選手が振り切られ見事なシュートを決められる。

 この試合、東京Vと札幌のパスの正確さが際立った。札幌は相手のパスをカットしても相手に渡してしまい、更にパスがそれることが多く上手くつながらず相手にボールを渡す展開が多く見られた。そのため、前半は、殆ど東京Vにボールが渡っていたのではないだろうか。

 しかし、ボールの保持率が高くとも試合に勝てるとは限らないのがサッカーである。後半開始後、自陣からのパスがトップの近藤選手に渡り、そのまま技ありのループしゅーとが決まる。これで再度札幌が1点リードする。

 そこで東京Vは長身FWの平本選手を投入する。これにより東京Vは、札幌ゴール目掛けて怒涛の攻めを繰り返す。札幌はゴール前を全選手が固め相手の攻撃を跳ね返すが、またもやペナルティ内から小林選手に見事なシュートを打たれ、再度同点になってしまった。

 普段の札幌ならここで足が止まったかもしれない。そういう選手もいただろう。更に相手の東京Vも足は止まっても攻撃を続ける、まさしく超攻撃的チームの本領を発揮する。

 しかし、その攻撃を自陣で受け止め跳ね返し、前線に放り込んだボールを、交代出場で入った上原選手が頭で競り、当てたボールがゴールポストに当たる。その跳ね返りをこれまた交代出場の岡本選手がシュート。

 再度東京Vを突き放す。残り10分で交代で入った岡本選手が勝利を決めた形である。その後すぐに、相手陣内で河合選手が相手のボールを奪い、またも岡本選手に好パスが出て、それを相手を交わす動きでゴールを決める。

 その間、東京Vは、得点を入れるために全員が前掛かりになっていたため、足が止まったDF陣では、札幌の攻撃を防ぐことはできなかった。

 この試合の綾は、幾つかある。

 その一つは、先にも書いた東京Vの移動疲れである。それを考慮して、パス回しを多くし、相手を動かすことで自分たちの疲労を少なくする作戦である。

 それは、前半は成功していた。しかし、後半途中、札幌はボールを深追いすることを止め自陣に少し引きながら網を掛けるやり方に変えた。無駄走りを辞めたことが正解だった。

 それでも相手の攻撃を受け止めてばかりでは、引き分けあるいは負けが必死の状態で、カウンターが見事に決まったことが2つめである。

 失礼ながら、あの近藤選手のループは、本当に難しい位置だった。決まる確率は1割程度だろう。既に相手選手が体を寄せていたので、あのタイミングでシュートしなければ打てなかっただろうし、相手ゴールキーパーがボールに触れない範囲に蹴らなければならなかったからである。

 もう一つ幸運だったのは、上原選手が当てたボールがポストに上手く当たり跳ね返ってきたことである。あれも角度が違えばというところであった。

 その2つの幸運が相手に重なって得点を入れられれば相手の選手の心が折れるのも当たり前である。あれだけ圧倒的に攻め、自分たちのシュートはわずかに外れ、ポストに嫌われる。その繰り返し、その反対に相手のシュートは、神がかり的に決まるのだから。

 本当に勝ちに不思議な勝ちありである。それは、あの試合をドームで応援していたサポーターの力で有ったのかもしれない。

 札幌は、この勝利で一試合多いながら首位に立った。まだ残り12試合もあるためこの後何が起こるか判らないが、この日の勝利は見ていて本当にうれしいものである。