TPP

 晴れ、しかし、空の半分は白い雲が覆っている。今日の朝は、放射冷却現象でこの秋一番の冷え込みである。もう少しすれば11月、冬はそこに来ている。


 TPPの話題。

 そもそもTPPとは何だろうというところから入らなければならない。略語のTPP(Trans-Pacific Partnership 又は、Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement)は日本語に訳せば、環太平洋戦略的経済連携協定となるらしい。

 ではそもそもどういった項目があるのか?実は、日本がまだそのテーブルについていないため詳細は判らないというのが政府の見解らしい。しかし、判らないながらも色々な推測はできるらしく、その論点が定まらないまま議論は外野から起こっていて、主導すべき立場の政府が立場を説明していないところに問題が生じている。

 自分もネットから情報を収集しているので偉そうなことは言えないのだが、そもそもの出発は、シンガポールブルネイ、チリ、ニュージーランドの4か国が、あらゆる製品(金融商品を含む)、それも例外なく100%関税を撤廃する協定に参加を表明した。

 上記四か国は、国の主要貿易品目が、工業製品ではなく、農業製品、天然資源の輸出国であるのが特徴である。これらの国にとって参加する他の国よりも強いものがあるからこそ、この協定を結べると言って良い。

 それに加え、アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナム、マレーシアが加わり、正式には参加が決まっているのは9か国である。

 そのほかにも、コロンビア、カナダが参加を表明し、韓国は独自にアメリカとFTAを結んでいる。

 今の日本が、参加に両論があるのは、この協定にアメリカが加わっていることだろう。ご存知のようにアメリカは、巨大国家である。天然資源、農産物、工業製品の消費国であり、現在の主要商品は、金融商品が全てと言って良い状態である。もう一つ輸出製品を上げるなら農産物である。

 もし日本がこれに参加したなら、日本の金融(特に郵貯簡保)と農業が壊滅する恐れがあるということで反対という陣営と、今の円高で工業製品が売れずこの先の商売の先行きが不安である、工業系の経済界の陣営がその参加の賛否の議論を戦わせている。

 そもそも関税の撤廃は、世界がEUという大きな経済連合が発足し、その域内で関税撤廃したことに端を発する。その一時的な繁栄を横目で見て、自分たちの国が有利になるような仲間を探し始めたことによる。

 でもその模範となるEUも、EUが一つの国家でないことから、国家間の格差が出始めた。それは、主要生産品が無いあるいは、相対的価値が低いものを生産している国がやはり利益を享受できず、何らかの高付加価値をもった製品を生み出す産業をかかえている国が有利になる仕組みとなっているからである。

 そのため、EU内でも全てが潤うのではなく、ドイツ、フランスなどの国が他国の利益を吸い上げる構造になってしまっているところに問題が発生している。

 

 EUでも、参加国に対して平等になるように利益の再分配を行い、参加国の不平不満を緩和しようとしているが、その相互扶助を良いことにギリシャのように借金で生活をしていたような国が、経済破たんをしてしまうと多くの国が被害を蒙る結果となる。

 EUと比べ、TPPはあくまでも関税を撤廃することが目的で、その他の政治的意味を持たないものだが、将来的には政治、防衛などの総合的な協定に発展する可能性も否定できない。

 それに後から参加しようにも、始めから参加していないと参加を断られる可能性も無きにしも非ずである。 

 色々な問題を一度には解決できない。将来の予測もできない。しかし、現在、日本の郵貯簡保の自由化は、大問題である。ハッキリ言ってしまえば、日本の赤字と言われる借金の多くは、郵貯簡保に依存していると言って良い。

 郵貯簡保側は、国債で預かったお金を運用していると言うが、運用では無く実態は空手形である。もしかするとその預けた金は既に実体は無く、預かったお金に対する支払利子分のお金しかない可能性もあるのである。

 

 まさしくそれは信用という架空のもので生み出されたお金であり、日本という国が信用されて初めて存在するお金である。その経営に日本が関与しているという理由だけで、実際にお金があるという事である。

 それが解放により、日本国の管理から離れたが最後、その金は空気のように消えてしまう恐れがある。あるいは、大半の実体のあるお金だけが、金融商品としてアメリカに流れて行ってしまい、残るのは空手形のみという事になる可能性がある。

 もう一つ問題なのは、やはり農業である。農産物は関税の助けにより生き延びていると言って良い。確かに、農産物は輸入に頼り、非効率な日本の農業はすべてやめて労働力は、第2次産業に振り分けることが今の時代の流れだろう。

 それを行うには、未来永劫、日本が消費する食料が安定的に日本には供給されるという約束が必要である。果たしてそれが今回の協定で保障されるかということである。

 実際のところ、そのことを日本に保障してくれる国は無いだろう。すべての国が、未来永劫政権交代をせず、今の政権がおなじかじ取りをするとは限らない。協定がご和算になり食料が日本に入ってこなければ日本人は飢えてしまうことになる。

 まあそれも、日本の食糧自給率でいえば、コメだけが100%なだけで、既に他の農産物の大半は少なからず他国からの輸入に頼っているのが現実なので、その米の生産が、他国より割安になれば良いだけなのかもしれない。

 農業人口が減少している現在、その反対を唱える人は、他の産業人口よりはるかに少なくなっており、この先いつまで反対の声が通るとは限らない。

 では、関税を撤廃することで日本の工業製品が今までより売れると言えるだろうか?実は、既にその力を失いつつある。それは、円高という問題もあるが、他国が相対的に力をつけ日本製品だから優れているという優位性が徐々に薄れてきている。

 もし、日本製の丈夫で優れているという優位性が他国の製品と差が無くなってしまえば、相対的に購入量は減り、輸出量は減るだろう。更に、既に家電、自動車などは日本で生産されておらず現地生産が主流となってきている。

 現地生産で儲けるという方法論は一見すぐれているが、実は日本の技術力も同時に輸出していると言っても良い。勝手の日本が他国製品をまねることで成長し売り上げを伸ばしたことが、そっくりそのまま他国で行われ始め、既に日本の技術力は、他国と比較して優位性を失い始めている、あるいは、失ってしまったのである。

 ここまで書いてきて判ることは、今までの工業製品を作り世界へ輸出して利益を上げてきた構造は既にこの先望むべきもなく、何を元に国民総生産を上げていくかという基本的なことに戻ってしまうのである。

 参加してもこの先に明かりが見えず、不参加という事になっても根本的な解決方法はないだろう。このまま日本が年老いて緩慢な死を覚悟しているなら不参加もありだろう。それの方が正しいかもしれない。