ビッグクランチ

 晴れ、しかし、寒さはこの月に入って一番の冷え込みとなった。アスファルトの水たまりには薄氷が張っていた。


 「ビッグバン」とは、宇宙が急激に膨張して、一瞬で無限大に広がったことを言う。そしてその宇宙の終わりは、その急激に広がったものがまた一瞬で縮むことである。それをビッグクランチと呼ぶ。

 ただこれは仮説であって誰も経験したことが無いことである。そのことを誰も照明はできない。


 世界経済は、世界がインターネットで結ばれたことを契機に一挙に膨張した。それは、実体のない経済を反映せずに仮想の空間で錬金術を行ったようなものである。
 
 そしてその膨張は、限界を迎えると同時に縮小し始めた。しかし、その収縮具合は、宇宙のように一瞬で行われるのではなく、タイヤのゴムに針の穴が開いたように緩慢に縮んでいた。
 
 しかし、その穴が一瞬で大きくなってしまえば、その時は、あっという間にしぼんでしまう状態にある。その穴は、アメリカで空き、アイスランドで空き、そしてギリシャ、イタリアと連鎖反応のように見つかっていく。

 世界経済がパンクするのを防ぐために、必死で皆が空気入れでタイヤを膨らまし、穴を取りあえず塞ぐために、そこにある身近なもので穴をふさいでいる状態である。

 ゴムのタイヤの穴を紙で塞いでも何時かは破綻する。それを防ぐにはきちんとした材料を使わなければならないのに、それができないために苦労しているわけである。

 世界の破たんは必ずやって来る。その衝撃が大きいか小さいかはこの先の世界の指導者たちがどういった手当てをしてくれるかにかかっている。

 ただ相当の衝撃は免れないだろう。そして世界の一員である日本も同じ運命を辿るしかない。そこで日本という国が今後どのような国になるのか想像する人が居ないのが問題である。

 もう既に、振れた針の向きは変わらないとしたら、そこからいち早く抜け出すための方策を考えるべきである。その中の選択肢の一つにTPPがあるのだが、果たしてそれが最後の命綱になるのか判らないのが問題である。

 ただ、この災難を頭を低くして如何にやり過ごし、来るべき復興に備えるか、それができる人間が指導者になることこそ日本には求められているのだろう。