孤独死と医療

 晴れ、風は無いので昨日と同じくらいの気温に感じるが、実際は5度くらい低い。



引用 デイリースポーツ(http://daily.co.jp/gossip/2012/11/13/0005522952.shtml

クレージーキャッツのメンバーで俳優の桜井センリ(さくらい・せんり=本名千里=せんり)さんが10日に都内の自宅で死去していたことが、12日、分かった。86歳。

 TVなどの報道では、自宅で孤独死していたことにはあまり触れなくて、クレージーキャッツの話題に移行する。あれだけ有名になっていても晩年身寄りが居なければ一人死んでいく世の中になったという事だ。

 

 老人の孤独死が話題になり、地域のつながりが強調され、ニュースで伝えられたが、何の成果も得られていないという事がはっきりしたのではないだろうか?却って何も変わっていないことがハッキリしたわけである。


 日本のいたるところで65歳以上の割合が30%超える自治体が増えてきている。これは止められない事実である。その中で老人は、孤独死していくわけである。それを予防するために人の力では無く、ハイテクの力で亡くなった人をいち早く見つけようと努力しているわけであるが、孤独で亡くなる人にとって自分の死んだあとのことなど無意味に等しい。有るとすれば、気付かれた後にお世話になる感謝の気持ちくらいだろう。


 そして、高齢化社会で問題になるのが医療である。今の医療は、高齢者と生活保護者で半分が成り立っていると言って良い。高額の医療費を気兼ねなく払えるのは今はその層にしかいないからである。

 しかし、いくら高齢者がお金を持っているからと言って限度がある。これから何年生きるか判らないので、そのための蓄えは取り崩せない。更に、すねかじりの子供が居ればそれらにどんどんお金をむしりとられ、オレオレ詐欺にあうこともある。そうやって医療費を支払ってくれる層が減り、更に最近では生活保護者の過剰医療費の問題がクローズアップされ、そこに制限が掛かろうとしている。

 

 この2本柱が細れば、医療に金が落ちなくなる。その時が日本の医療の崩壊が徐々に進むきっかけになるだろう。そしてそれはまず、地方から始まっている。

 国は、その現実から目を背けさせるために、地方の赤字を先延ばしし、補助金を注ぎ込んでいる最中である。死ぬ間際に使われるカンフル剤のようなもので一時的な延命効果は認められるが、それも長続きしないはずである。何時かその効果も切れるか、カンフル剤そのものが尽きてしまうだろう。

 まだ、カンフル剤が使える地方は良いが、それが使えない都会の病院は、上記の影響のほか、老人のために作られているケア付き住宅、介護施設などが増えたことから入院患者は徐々に減りだし始めている影響が出始めている。

 今までなら具合が悪くなれば直接病院に来て入院、治療後自宅に退院というサイクルが崩れ、直接入院では無く、その施設で簡単な治療が施され、状態が悪化しなければよりひどくならなければ入院しないという事になり、自宅から直接入院していた人も徐々にそういった施設に入所するようになったから、病院の外来は減り、相対的に入院患者も減ることになる。

 多くの医療法人は、そのため自分たちでそういった施設を運営して何とか赤字を埋めようと努力を始める。そして今の現状は、軒並み増えた施設の運営で手一杯の状態にある。もし、国の財政が破綻すれば真っ先にそういった拡大政策をとってきた医療法人は、慌てることだろう。梯子を外されてしまえばにっちもさっちもいかないことは自分たちが良く知っているからである。

 どちらにしても、あと30年もすればその結果は出る。日本経済が極端なV字回復をして国として成り立っていればそれなりの医療が受けられる環境は整えられるだろう。しかし、5年先、10年先も変わらなければ、30年後の高齢者医療は間違いなく崩壊する。

 今生きている40代、50代の世代は満足な医療を受けられず死んでいく可能性も極端な話無いわけでは無い。

 それを乗り越えるには、やはり施す医療の質をどの程度まで許容するかである。