偽装

 晴れ、気温は1度と冷え込んだ。アスファルトの道路にある水たまりには薄氷が張った後が残る。

引用 北海道新聞http://www.hokkaido-np.co.jp/news/dogai/500725.html

阪急阪神ホテルズ大阪市)がメニューと異なる食材を使っていた問題で、同社の出崎弘社長は28日、大阪市内で記者会見し辞任することを明らかにした。問題発覚から1週間で、トップの責任問題に発展した。

出崎社長は辞任理由について「不当な利益を得ようとする目的はなかったが、そんな理屈は通らない。信頼してくださっているお客さまへの裏切り行為で、偽装という指摘を受けても仕方ない。信頼失墜を招き、迷惑をかけた」と述べた。辞任は11月1日付。

 

 食品偽装は、毎年繰り返し報じられる話題である。やる方にとって加工された食品の素材を見抜けるほど利用者の舌は敏感でないと知っているからである。

 

 今回の表示に関しては一石二鳥の効果がある。まず一つは、材料費との差額により利益が上がる。もう一つは、レストランとしての箔が上がる。

 利用者としては、味が問題ないなら声を上げにくいし気付きにくいし、こういったレストランは、高級な食材を使用しているという先入観から美味しいものと思っているし、エビが大正エビであればそれだけで舌が納得してしまう部分がある。

 もし、高級材料で本当に料理を作っているなら安価な値段で出されることは無い。もしそれが実現可能ならホテル側が利益度外視の営業を行っていることになるが、まさか赤字を出してまで営業をすることは無いと理解できれば、きっと素人でもレストランのメニュー表示に疑問を持つだろう。

 最近、スーパーなどに買い物に行くと疑問に思うのは、梅干しである。以前なら梅干しの原産国は殆どが中国製であった。それが最近、粒が大きいものは軒並み紀州南高梅に変わっていることである。そして値段も以前なら、紀州南高梅は1000円程度で売られていたものが今では半額の値札が張られている。

 もし、この梅干しが全国のどのスパーでも売られているとしたら相当な量が収穫されていることになるが、日本での生産量が劇的に増えているわけもなく、却って中国産の輸入量が毎年増加していたのは間違いない。

 比較的小粒の梅干しに関しては、今でも原材料を中国としたものが安価に売られている。ここに日本産の梅干しが売られていることは無い。となると、何故最近、紀州南高梅と商品名にも表示されている梅干しが増えてきたのだろう。

 ここいら辺りで、普通なら怪しいと思う消費者が多いのではないだろうか?自分も最近スーパーでは、産地を見ながら買い物をしている。冷凍食品なども以前なら中国産が多かったが最近は材料を国内産と表示しているものもチラホラ見かけるようになってきた。

 

 以前なら中国産を気にせず買っていたのだが、最近ショッキングな映像を見てしまった。それは、とても衛生的とは思えないような工場でどぶ水のような水に浸かった塩漬けされている野菜であった。そしてそれをまた汚いトラックに満載して運び去るというものであった。

 あの野菜の一部は、原材料として工場に送られ、加工され綺麗な袋詰めにされ日本に輸入されてくるのだろうと。あの野菜自体も、禁止された農薬が使われて作られてきたのだろうと。そう感じさせる映像であった。もしかするとあれは一部の生産者で大部分は衛生的に生産されているのかもしれないが、でもそれを確かめる術は日本の消費者には無い。

 食品偽装は、一種の商売人のモラルを計る計測器である。今回の阪急阪神ホテルズの偽装表示は、灰色では無く真っ黒と言えるレベルである。そこに商売人としてのモラルは無いと表示されたようなものである。

 こういった思想は、一つでは無く全てに伝わるものであり、レストランに係らず本業のホテルに関しても同様の事例があるのだと宣伝しているようなものである。

 一夜で消え去る露店のような商売をしているならそういったモラルが欠如していようとも、消費者はそれを込みで製品を購入している。当れば儲けものというようなジャンクそのものである。しかし、店を構えその地に根を下ろしているような商売を行っている店はそうでは無い。そういった商道徳に反する商売をしていないというネームバリューからある程度の支払いは考慮の上で消費者は行動している。そういった商品価値をゼロにする。

 今回の当事者は、当初それ程この件を問題視していなかった。担当者の勘違いで押し通せると踏んでいた感がある。それが場末の小汚い洋食屋のレストランのメニュー表示なら本当を書いても、利用者に信じて貰えないだろうし、それが間違っていたとしてもやっぱりといって納得されてしまうだろうが、一流という看板を掲げているレストランはそれだけで評価を下げることを知らなかったようである。

 この件に関しては、みのもんた氏も悔しがっているだろう。本来なら自分がこの事件を大々的に庶民の代りになってとことん追求しただろうからである。それによって名誉回復もできたかもしれないからである。ただし、それも身から出た錆である。