テレビの行方

 晴れ、気温は0度。

 今日は、週末の土曜日だから、朝のニュースはNHKしかない。他は土曜の朝だからこの程度の番組を流せば十分だろうというような番組ばかりである。

 朝にきちんとしたニュースを流せばそれなりに視聴率は稼げると思う。それは横並びではなく他者との違いを見せることで自分を目立たせるコツである。

 同じような番組ばかりでは、他者との差別化が出来なくて埋没してしまう事を今までの経験でテレビ局の職員は気付かなかったのだろうか?

 その点でいえば、フジテレビの路線転換は見事だった。テレビという制約があり、これを超えると不味いというラインがあり、全てにおいてある境界を設けて番組作りを行っていた。その中ではみ出そうとした番組が教育に悪いという事でやり玉に挙げられてきた。

 そういった基調に流れる固い真面目といった路線で各局が横並びしていた状況で、フジが始めたのが軽佻浮薄路線だった。今までの、何となく時代的には遅れていたテレビ番組を変えて見せた。

 しかし、時が経ち業績好調のフジに追いつくために各局が同じような構成や同じお笑いタレントを使った番組作りをするようになると、途端に全ての局の番組作りが横並びとなり、かってあれだけ目立っていたフジが埋没するようになってしまった。

 そこでフジが打ち出したのが、韓流と呼ばれるドラマだった。それは順調に伸びる感じを見せたが、日本の停滞とお隣の韓国の勢いが勝り始めた途端、韓国の日本に対する竹島等の批判が強くなると同時に、フジの韓流押しが批判の矢面に立った。それと同時に、相変わらずの手法が飽きられつつあった時に、潔く方向転換できなかった。

 ある意味、フジは各局横並びの中、特色を出すのと同時に番組制作費を節約できるという利点から韓流押しを行ったのだろうが、それにより更に制作能力の低下を招いたという結果に陥ってしまった。

 バラエティは、番組内容というよりもお笑いタレントの能力に依存し、番組作りの原点を失い、ドラマ制作も他国から買ったものを流せばドラマ制作の能力は低くなる。俳優も出演作が無ければ演技能力も見せられず、更に短期間で話題性だけで作るものだから、ある意味学芸会の延長のような演技を見せられてしまっては、視聴率も上がるはずもない。

 全ての点で、デフレスパイラル状態に陥ったのだ。それはフジだけではなく他のテレビ局も同様である。そのどんぐりの背比べの中で更にフジが埋没してしまったというわけである。

 この先、テレビの影響力は年と共に下がって行くだろう。それは、情報のデバイスとしてのインターネットを使うデバイスに人は依存していくことになるからである。今後益々、テレビの比重は下がりネットから得られる情報で多くの人は満足してしまうだろう。更にテレビ番組は録画で見られCMはどんどん飛ばされ、番組提供は何の効果ももたらさないものに成る。

 今後、テレビが生き残る番組コンテンツは、スポーツ中継に成る可能性が高い。それは、録画での放送は不可で、あくまでリアルタイムに放送することで視聴率を稼ぐしかない。ゴルフなどは、昔から日曜の夕方、結果が出た時点で録画放送していたが、今のようにネットが発達すると結果を漏らさず放送することが困難になる。結果を知った録画放送を見る人は限られるからである。

 しかし、そういったリアルタイムで見せる放送で視聴率を稼げるものは年々少なくなってきている。大リーグも一時期の野茂や松井やイチローの活躍していた頃から比べるとその興奮も冷めつつあり、更に来年開催されるW杯サッカーの放映権料の問題で、放送する試合数が減らされるようである。人気のある視聴率の稼げるスポーツコンテンツは徐々に高くなり、テレビ局が放送できる限界に来ている。今後もスポンサー離れが続けば、CMに頼る無料放送は成り立たなくなり、もしかすると無料放送の間に有料放送が刺さり込むあるいは有料チャンネルでしか見れない番組も出てくるだろう。

 それは、一時的に経営の立て直しに成るが、生来的には限られたパイの奪い合いに過ぎずテレビ業界全体が増収増益につながるものでは無い。言ってみれば線香花火のようなものである。

 以上書いたように、今後テレビの存在価値が薄れ、生き残りを掛けた業界再編が迫っている。地上デジタル放送により地方テレビ局の利益保護が出来たが、この先地方テレビ局の存在が薄まるだろう。今でも系列局というくくりが存在するが、それが一層鮮明となり子会社化が進むだろう。地方ならではの番組作りをするのにこれ程のテレビ局が地方にある必要は無い。県単位に存在する必要性も無いので、地方単位に集約されるだろう。

 

 例えば北海道なら民放が5局もある必要性が無く一社独占で番組を作り、それをキー局に流すようにしなければこの先5局も生き残れないだろう。あるいは有料放送に舵を切るかである。

 そうなれば、東北、関東、北陸、東海、関西、中国、四国、九州と9つの放送局が有れば全国放送できる番組作りは充分になる。今のように東京にキー局が集中するメリットは薄くなるだろう。

 今まで安泰と思われたテレビ局も、激動の荒波に抗う事はできない。やはり隆盛を誇るものは必ず落ちて行く運命にあるというのも真理であるとまざまざと感じさせる。