曇り、気温は21度。


 台風一過で少し落ち着いた朝を迎えた。道路の隅には街路樹の風で引き千切られた葉が積もっている。昨日の風の強さはそれ程強かった証である。日本全国でこの台風の後始末に追われているのだろう。



 コンサドーレ札幌も負け続けているが、その原因の一つに心の弱さがあるのだと思う。札幌の土地がそうさせるのかもしれないが、一生懸命頑張るのだが瀬戸際の強さが無い。相手に強く出られ、自分の能力の限界を悟るのか素直に相手に勝ちおゆずる傾向にある。それが心の弱さだと思う。本人は知らず知らずにその罠に落ち込んでしまっているのだろう。

 その境界は紙一重の様に見えて実は、ナイアガラの滝の落ちる前と落ちた後の落差位に結果が違ってくる。その強さを鍛えるにはどうしたら良いのだろうか。

 それを解決する一つの方法は、自分の心の弱さを知ることだと思う。人は、色々な欲に負けてしまう生き物である。腹を空かせたときに目の前にご馳走が有れば手を伸ばさずにいられない。

 目の前に何時でも食事が食べられる状態にあれば、それを我慢するという生活は身につかない。もし欲望に負ける心の持ち主なら我慢することなく際限なく食べ続けてしまうかもしれない。しかし、その行為を止める切っ掛けさえあれば人間は手を伸ばすのを辞めることができる。

 その切っ掛けはさまざまであるが、そういった生活の欲を絶つことが最初だろう。与えられたものをガツガツ受け入れて行くだけでは無く、自分の欲望を抑える訓練をしなければ次のステップには進めない。

 人は欲が無ければ成長しないともいう。それは目標を達成する意欲であったり、誰かに褒められたいという名誉欲であったりする。その一つが成長の糧となるのは言うまでもない。しかし、それと同時にそれを際限なく得ようとすればそれだけが目的となり本来の目標を見失う事にも通じる。

 それでは、札幌の選手が目的を達成するために何を捨て、何を求めなければならないのだろうか。

 まずしなければならないのは、やはり自分の優れた点を伸ばすことである。ドリブルが得意であればとことんそれを追及する。体力が自慢であればそれを更に鍛える。チームで一番に成り更にJリーグでは負けない選手に成ることである。まあそこまで行くと日本代表レベルに成るが。

 そこに自分のストロングポイントが出来れば、相手にどこで勝負するかが理解できてくる。パスが正確、トラップが正確であればそれを更に突き詰める。FKは必ずゴールの枠の隅に入るくらいの精度を持つ。それだけで環境が変わる。

 北九州戦で櫛引選手がゴール前で相手選手にボールを奪われたシーン、あの場面で櫛引選手は、自分が得意な対処方法が無かった。そのため足元の技術が無いため、ミスしたら相手に取られるという恐怖心から判断に遅れが出た。もし彼ができることとしたら、その弱点を知って早めに外に蹴りだすか、思い切り相手に体をぶつけ跳ね飛ばしてしまうかだっただろう。それ位の体の強さは持っているはずである。

 

 しかし、それらのいずれもせず、自分のボールコントロールで相手を交わせるのではないかという欲を出してしまった。それ程上手くないはずなのにできると考えた選択が間違いだったのである。

 本当に、その一瞬で心の中に芽生えた欲望が考えを支配する。何かを決断しようとすればするほどその欲に負けてしまう。それを排除するのがやはり自分の一番強い所で最後は勝負するしかない。その判断を下すには、やはり日頃自分に課した誘惑に負けない心を作ることなのだと思う。

 この前の京都戦、相手に得点を許したシーン、あの周囲にいた選手全員が自分がボールを取りに行こう、奪ってやろうという気持ちが強すぎたところに隙が生まれた。

 本来ならあの人数が揃えば相手を囲んでボールを奪えたはずである。いつも練習している鳥かごと同じである。しかし、自分が奪ってやろうと思うと同時に、他の誰かが取るだろうという甘えた気持ちが最後の詰めを遅らせ簡単にパスを出させてしまった。飛び込む選手が居なければ自分がいかなければならないし、本当は守りに行った全員が相手に飛び込まなくてはいけなかったシーンである。

 あのゲームの中で感じるのは、ここで決めなければ来年の自分の席は無いという切迫感である。このまま試合を続けていても来年もサッカー選手でいられるのだろうという甘えた雰囲気である。シュートミスをして悔しがって見せているが、それも周りに対する自己弁護の演技に過ぎないのだという事を早く判って欲しい。

 若い選手が小さい頃夢見ていたヨーロッパの一流チームに加入してゲームをすることも、若い頃に結果を出さなければその夢はかなわない。20代後半に成ればその夢は叶う事は殆ど無いと思う。その夢を諦めた多くの選手たちがJリーグには存在する。そもそも夢がJリーグの選手に成ることで達成したのなら、他の選手の夢を達成できるようにアシストする役割を果たして欲しいものである。

 サッカー選手にとって一番上に上り詰めるという夢を達成できるのは20代でしかできない。その夢を達成する欲を持つには、その他の欲を捨て去る覚悟が必要だろう。

 ただし、その壁を超えるにも才能が必要なのは言うまでもない。努力だけでそれを超えられないのが残念である。