脳組織

 晴れ、気温は5度。この秋最低気温である。日向と日陰の気温差は風が少しあるため1,2度違うように感じる。

 以前も書いたかもしれないが、脳組織は、色々なことを起こす。

 脳組織というのは、知覚、臭覚、聴覚、視覚、触覚と呼ばれる人間の五感の元締めである。今、見て感じている世界も脳組織というものが働いているから存在する。この五感を失えば人はこの世に存在するとは言えなくなる。

 今生きている人たちの多くは、目の前に存在するものを認識している。例えばこの文章を打ち込んでいるキーボードも、目の前にその姿を確認し、指でキーを感じながらタイピングし、画面に映る文字を認識している。だから自分の前に存在できている。

 そして、他人にもキーボードという存在が自分と同じように認識できるから共通のものとして扱われている。現実社会に住む多くの人は目で見るものが他の人と同じ姿、形が同じだからそれを同じものと認識できる。

 そういった活動をしている脳組織だが、実はたまに現実には存在しないものを存在させる。それが幻視、幻覚、幻聴であり、更に匂いや味までも作り出してしまう。

 それは正常に機能すべき脳組織が何らかの切っ掛けで脳内に異常信号を作り出してしまうからである。一番わかりやすいのは、麻薬といわれる物質だろう。

 その作用は、脳内の神経伝達物質と類似した構造を持つため脳の神経組織を混乱させる。そのため普段結びつかない記憶の断片を結び付け存在しない記憶を作り出す。

 それは、麻薬によらないことも多い。その一つが霊感と呼ばれるものだろう。それを無いという証明はできないが、人は、物事を考える時必ず脳組織が関与する。その際に、ありえないものを見せたり考えさせたりすることは容易に起こりうる。

 もしかすると霊感が強いという人は、神経伝達物質が時折異常に分泌させるのだろう。そのため、ありもしないものをあたかも現実に存在するように見せてしまう。もう一つの原因は、嘘をついているかである。

 そうした幻視という症状は、脳組織の障害でも起こりうる。その一つにパーキンソン病という病気がある。原因は不明だが、ドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が減少する。そのため減少したドーパミンを補充する薬物治療が行われる。

 上に上げた幻視だが、病そのものと同時に病気の治療に使われる治療薬の副作用によっても引き起こされる。治療薬の多くは、神経伝達物質を補うあるいは分泌を促進させるなどの種類があり、どれもが神経伝達物質が脳内に多く存在させようとするものである。いつも足りない状態なら良いがそれが過剰になると副作用が発生するのは理解できると思う。

 以上に上げたように脳組織は、正常に動作しているときは現実を素直に見せてくれる。しかし、時折起きる神経伝達物質の量のバランスが崩れれば異常な動作をしてしまうものである。すべてが病が原因ではなく、薬であったり、食物であったり脳組織に異常を起こさせる物質はいろいろ存在する。

 目の前に広がる景色や音が正常に聞こえているかどうかは本人には理解できない。周りにいる人が見えているものが見えないあるいはその反対も起こりうることである。

 脳組織が人間に不可欠なものであるが故、その根本が狂えばそれを正常に戻すことは困難なことである。