深層循環

 曇り、気温は19度。あまりぱっとしない天候である。

 今日はお盆休みで休みのところが結構あるので何時もの通勤路には人通りが殆どない。みんな休んでいるのだなと思うし、急ぎの要件は全て後回しにされてしまった。メールボックスに来るのは迷惑メールばかりなり。

 北朝鮮の挑発行為も情報が無く、グアムへのミサイル発射が何時になるか分からない状態である。一般庶民にとって戦争が起きる時はこういった平穏な時に唐突に起きるものなのかそれともそういった情報が錯綜していても普段の日常生活はこなさずにはおられないというところなのだろう。

 日本が第2次世界大戦の口火を切った時も切ったこんな風に、情報はあるのだろうがどういう風に対応するという心構えが無いため始まってから考えようという人が多かったのだろう。

 だけれども平和を享受しているのは、日本だけなのかもしれない。中東はISの関係で戦闘は絶えないし、アフリカは民族間の争いが頻発している。中米は麻薬ギャングと政府軍の争いがあり、ヨーロッパはテロとの戦いが続いている。平和に暮らしていても身近に迫る恐怖を感じ取って生活している人が多いのではないだろうか。

 地球環境の話題もそうだが、地球の気候は目に見えるほど変化している。人類が戦争で滅びるのか環境の変化で滅びるのか判らない状況に近付きつつある。もしかしたら両方が原因で滅びるのかもしれない。

 しかし、片方の相手は自然でもう一つの相手は人類である。どちらも簡単に解決できることではない。

引用 東京大学海洋アライアンス(http://www.oa.u-tokyo.ac.jp/learnocean/knowledge/0017.html) 

海流にはもうひとつのタイプがある。深層海流だ。黒潮などの表層の海流が風で生まれるのに対し、深層海流は海水の重さの違いで生まれる。海水は、塩分が濃いほど、そして水温が低いほど重い。水面近くにこのような重い水があれば、その水は沈んでいく。実際に沈み込むのは、北大西洋の北部や南極周辺の海域。水深数千メートルに達して世界をめぐる。

沈み込んだこの流れは、北太平洋やインド洋で上昇して海面近くに出てくる。それが大西洋に流れて、また沈み込む。ひとめぐりするのにかかる時間は1000年から2000年くらい。めぐる距離からみても、それにかかる時間からみても、まさに壮大な流れなのだ。

このタイプの海流を、流れを生むもとになる水温や塩分に注目して「熱塩循環」とよんだり、深い流れだから「深層循環」とよんだりする。

 上の引用は、地球に存在する海の話である。大西洋、太平洋、インド洋にまたがる大きな大循環である。今のお風呂の水は、最初から暖められたお湯で入れるため経験する人は少ないと思うが、昔は五右衛門風呂という薪などで窯の下から熱を加えお湯を沸かす風呂があった。

 その風呂は、下から熱を加えるのに何故か上の水面の温度が先に上がり底の方は冷たいという現象が起きる。表面を手のひらで測り風呂が沸いたと思って入ると中は冷たく、入るときには何かでお風呂の水をかき混ぜる必要があった。

 地球の海は底から熱せられることは無いが、五右衛門風呂と同じように表面の温度は高く深海の海水温度は低くなっている。五右衛門風呂が下から熱しても表面の温度が上がるのは、熱せられた水の比重は、冷たい水より小さいので表面に浮き上がるということである。

 当然冷たい水と温かい水が風呂の中で入れ替わるので対流が起きている。その大きな風呂釜が大西洋、太平洋、インド洋などの大洋である。地球の海は地球を一つの風呂釜と考えればわかりやすい。

 太陽の熱で熱せられた海水は、比重が軽いので海の表面に留まろうとする。そこの海水は冷たく重いので沈んだままになるはずのだが、太陽が熱を加えるのは太陽の光が当たったところでだけである。更に太陽に近い赤道付近と太陽の光が届きにくい北極や南極付近では海水に加えられる熱量は異なる。

 この場所による熱量の違いが、熱量保存の法則に従い海流を生み出す。更に北極や南極で冷やされた水は深層に沈もうとするため循環を生む。表面の海流と上から下への海流という2つの方向をもって海水は地球を循環しているのである。

 ここで一つの地球環境上の問題がある。それが上に書いた深層循環が途絶えてしまう可能性があるということである。

引用 気象庁http://www.data.jma.go.jp/kaiyou/db/mar_env/knowledge/deep/deep.html

地球温暖化等の気候変動の影響により、底層まで沈みこむような重い海水が形成される海域の海水の昇温や、降水の増加や氷床の融解などによる低塩分化によって、表層の海水の密度が軽くなり、沈みこむ量が減少し、深層循環が一時的であれ弱まるのではないかと考えられています。 北大西洋での深層水形成が弱まった場合、南からの暖かい表層水の供給が減り、北大西洋およびその周辺の気温の上昇が比較的小さくなることが指摘されています。

 地球温暖化の影響により、今南極や北極の氷が解け始めている。深層循環のもう一つ塩分濃度が関係している。塩分濃度が高い海水は薄い海水よりも比重が重いため下に沈もうとする。特に北極や南極は気温が低いため表面の海水が凍るため徐々に海水の塩分濃度が濃くなり比重は重くなる。だから南極や北極で海水は下に沈んでいく。

 しかし、南極や北極で海水が凍らなくなり氷山が次々と融けだして真水が海に流れ込むとどうなるだろう。当然海水の塩分濃度は薄まってくる。それまで北極や南極で循環が起きていたものが起きにくくなるということである。南極や北極の氷山が解けることで及ぼす影響は海水面の上昇とは別に深層循環が起きにくくなるという現象を引き起こすことになる。

 その循環がまず大西洋で起きるだろうと予想されている。何故なら丁度アメリカ大陸とユーラシア大陸に挟まれた狭い地形になっているため太平洋より早くその影響が出てくる。

 では、大西洋の深層循環が止まればどうなるかというと、イギリスなどの比較的緯度が高くても暖かい地域が寒冷化する。地球温暖化と反対に寒くなっていくのである。温暖化の話題が出ているのに氷河期という間反対の話で戸惑うのであるが、循環が止まれば地球上の中で比較的バランスが取れた環境が一変する。あるところでは暑くあるところでは寒くとなれば、それが均一になろうとする力が働き、今よりももっと変動が激しくなるということである。そういった環境で人間が作物を作り生きているかは、その時になってみないと判らないが、間違いなく今の地球上の人口を支える環境にはならないと断言できる。

 予想では21世紀中には怒らないとされているが、間違いなくこの先地球の環境が人類にとって厳しいものになる。果たしてそれまでのタイムリミットまでの間、人間同士の争いでそのリミットを早めることのないようにして欲しいものである。