日本代表の戦いを振り返る

 雨、バケツをひっくり返したような豪雨ではなく、間断なく降り続く雨である。気温は13度。急に冷え込んでしまった。これも台風から変わった低気圧が横切る際に北の冷たい冷気を引き込むため。しかし、今年は例年になく北海道は雨が多い。

引用 footballZone(https://www.football-zone.net/archives/119223/2) 

「2-0になってメンバーもそのまま。3点目という気持ちは非常に強くありましたし、チャンスもありました。ある程度、ボールもゲームもコントロールする時間帯が直後にもありました。ただそこで、ベルギーが本気になってしまった」

そう語る西野朗監督も、リードすればベルギーが目の色を変えてくるのは予想していたようだ。言い換えると、そこからどう押し切って試合を終えるかが、本当の勝負だったと言える。

 日本にとって難しかったのはベルギーの意識が変わっただけでなく、戦術的にも長身MFマルアン・フェライニとサイドの打開力に優れるMFナセル・シャドリを同時投入して、パワープレー色を強めてきたことだ。

 確かに攻撃では攻める姿勢を失わなかった日本だが、守備に回った時に相手の圧力が増したことで、自陣に引いた守備の時間が長くなった。押し込まれる時間が続くなかで、平均身長が10センチ近くも高いベルギーの波状攻撃を防ぎ続けることは難しい。リードを保ったまま深い時間帯になれば、DF植田直通を投入するといった対策もできたかもしれない。

 だが、冒頭で長友が悔やんだシーンから、後半24分、29分と二つともCKから、ハイボールが続いた直後のヘディングでのループシュートフェルトンゲン)と、クロスからのヘディング(FWエデン・アザールからフェライニ)で立て続けに決められた。

 試合が終わった直後は、日本代表として良く戦ったという思いが勝っていたが、時間が経つにつれ試合の進め方が上手ければ勝ち上がることが出来ただろうという思いが強くなる。

 果たしてこの大会、監督交代が無ければ日本代表のベスト16は無かっただろうかという思いが最初に来るが、これは、比較しようがない命題で結論はでない。

 しかし、今大会ベスト16に進めたのは、やはり前半開始早々の相手選手のハンドからのPKと退場により相手選手が一人少なくなったということだろう。あれが一つのターニングポイントになった。

 その後セネガルに引き分け、ポーランドには敗戦と第一戦の勝利が無ければ前評判通り敗退していた可能性は非常に高い。だから日本代表の今回のベスト16は幸運がもたらしたものである。

 しかし、こういった大会は、幸運に恵まれなければ勝ち進めない。予選リーグで敗退したドイツしかり、勝ち進んだスペイン、アルゼンチンにしろ一歩間違えば予選リーグ敗退の危機があった。実力があるチームが必ず勝ちあがるものでもない。

 しかし、W杯は勝ち上がった後は、やはりチームの実力が徐々に試合の結果を左右する。幸運も必要だが勝ち上がるチームはやはり底力がある。

 では、決勝トーナメントを戦ったベルギーと日本代表の差がどれくらいあったかというとそれ程大きな差は無かった。確かにベルギーの選手層は厚く、FWは得点力がある選手がそろっており攻撃に関して一枚上手であるが、守備に関しては足が遅く上がった後の戻りのスピードが不足していた。その点は、高さに弱い日本代表の守備力と互角といって良かった。

 ベルギーの勝利は、高さに弱い日本の弱点をついてきたことが大きい。それに対して日本代表は何の手立てを打つことが出来なかった。それが大きな敗因である。

 相手の1点目は仕方がないシュートでラッキーシュートである。あれはGKの責任ではないが、その前のパンチングで逃れたプレーが中途半端であった。大きく弾き返すならまだしもペナルティエリア付近に返すのがやっとでそのクリアが小さくなったしまったのもあれなのだが、できるならキャッチングして欲しかった。今大会、川島選手のゴール前の動きが非常に消極的で移動範囲が非常に狭かった。余り身長が高くなく読みでプレーするタイプなので、前に出て交わされることを嫌がったのだろう。

 1点返されたことで選手たちに一点を守り切るのか攻撃をするのかの意思統一ができなくなった。それゆえのちぐはぐさがセカンドボールを拾えなくなりクリアするだけになったところが追加点を決められた原因である。

 その後に交代選手が入ったが、このタイミングが遅すぎたといえる。明確に監督が守備を固めるという意思表示をしたければ相手に長身選手が入った時点で決断すべきだったのだろう。そのため、日本が選手交代した時は、同点にされており、本田、山口という交代選手の意味が分かりにくい状態であった。

 攻撃において本田選手は役立つが守備力は無い。更に山口選手は、最近の試合を見ても守備力は低下しており今回もボランチとして相手の攻撃の芽を摘み取る動きは見せることが出来なかった。

 本田選手は、前線を動き回り選手間の距離を無視する。相手にとって守りにくいが、それは逆に前の選手の守備の動きを邪魔をする結果になる。その辺りは諸刃の剣である。

 最後のCKで簡単に蹴ってしまったことに批判はあるが、あれも結果論で相手キーパーの動きを止める動きを日本の選手がやっていないことにある。相手キーパーの飛び出しを防ぐような動きが無いため簡単にボールを取られ、更にカウンターの備えが選手たちに無かったことが大きい。CK失敗で後半が終わっていれば、また違った結果になったかもしれないが、相手に一泡ふかしてやろうという気持ちが勝っていたのだろう。

 そして、ヘディングが強い選手がDFの吉田、昌子選手で守備にすぐ戻れない状況だったのも日本にとって痛かった。

 しかし、そういった事を招いたのもやはり監督の采配であった。ベスト16に進んだことで西野監督が評価される向きもあるが、監督の手腕としては4試合を通してみるべきものは余り多くない。しいて上げるとすれば柴崎選手と乾選手を先発に起用したことが大当たりだった。

 日本代表はベスト8に進出出来る可能性は高かったが、実力的に言えばそう幸運は続かないということだろう。それは選手たちも感じているに違いない。その幸運も実力の内なのかもしれないがそれが永遠に続くことができないのは確かで、それをどれだけ長く維持させるかが監督の力である。

 W杯前に監督交代という博打を打ち、結果的に決勝トーナメントに進んだのだから監督交代は成功ということになる。それは、それを主導した日本サッカー協会会長のもつ運だろう。もし、3連敗で大会を終えていたなら間違いなく大きな批判にさらされていただろうが、これで大きな問題もなく会長職を続投されるに違いない。この点で言えば日本サッカー協会もこの体制が続くということだろう。

 W杯はまだ試合を残しているが、真夜中の試合が続くため日本国内の熱は冷めていくだろう。もうお祭りは終わったということである。