イノシシ救助の裏

 曇り、気温は7度。日中、平野部に雪が降る所もあるという天気予報だった。そろそろタイヤ交換が必要である。

引用 読売新聞(https://www.yomiuri.co.jp/national/20181028-OYT1T50075.html) 

 北九州市門司区北川町砂防ダム内にイノシシ2頭が迷い込んだ騒動で、県と市は27日、取り残されていた1頭をわなで捕獲し、山に放した。

 市によると、ダムは高さ約6メートルのコンクリート壁に覆われている。12日に斜面から転落したとみられる2頭を近くの住民が発見。テレビなどで報道され、市に電話やメールで「助けてほしい」などと要望が寄せられた。

引用 日本農業新聞http://news.livedoor.com/article/detail/15506024/

福岡県北九州市砂防ダムに落ち、脱出できなくなったイノシシが注目を集めている。同市は静観する姿勢だったが、報道で知った人から「かわいそう」と同情の電話が殺到。やむなく救出に動きだした。ただ、市内ではイノシシによる農業被害が深刻。助けを求める電話は、ほとんどが市外からだった。現場の実情を脇に置き、地元自治体が対応せざるを得ない異常事態を受け、住民に困惑や不安が広がっている。

 このイノシシの映像は繰り返し流され、それがかえってかわいそうの声が大きくなったのだろう。

 この話題には、もう一つの側面がある。イノシシは農家にとって害獣に近い存在である。山の中で人里に出没しなければ問題ないのだが、人里に近づけば農家の人が丹精込めて育てた野菜などが食い荒らされ被害を受ける。このイノシシを助けることは、明日の我が身の糧を失う可能性があるのである。

 だから、可哀想の言葉だけで遠くにいる人にとって身近な現実が見えていないのである。もしテレビ局がこのニュースと一緒に、農家の畑がイノシシに荒らされている様子を説明したら世論はどう反応しただろう。

 ニュースとはそういうもので、可愛らしいパンダの映像と共に、人を襲う映像を流せばどうなるだろう。パンダはただ愛くるしい動物ではなく、時には人を襲う時があると知ったら今までの人気は消えてしまうだろう。

 我々は、時には人が作った映像に踊らされているのである。恣意的に情報を伝えようとすることは良くあることで、権力者は特にその餌食になりやすい。それは権力を持つ者の宿命というものなのだが、権力を持たないものがそういった悪意のある映像を流されたらどう感じるだろう。

 良くあるのが凶悪犯罪の容疑者の場合である。まだ、事件が解決していないのに逮捕された事実から犯人だと決めつける。そこで思い出されるのは、「和歌山カレー事件」の映像である。逮捕されたと同時にそれまで受けていたインタビューの映像が盛んに流された。その印象操作ぶりは強烈だった。

 報道は時には凶器になる。ペンは剣よりも強しといわれたが、剣と戦う時もあるが人を傷つける時にも使われる。ダムに落ちたイノシシにとって命を救われた出来事だったかもしれないが、一見善意の行為でも多くの人の犠牲に成り立つこともあることを考えさせた事件でもある。