体に纏わり付くような細かい雨が降っている。風に吹かれ向きを変えるため差してる傘も役に立たない。

 朝は、まだ雪解け間近のような寒さである。開きかけた蕾もまた温かさが戻ってくるまで殻に閉じこもってしまった。

 道を歩いていると、昨日といつの間にか景色が変わっているのに気づいた。それは街路樹の葉の緑がいつの間にか枝から顔を出していることである。

 昨日と今日は、一日しか違わないのにその一日が様子を変える。僅かな時間の差でも全く同じ過去に戻れないと言うことである。

 こうやって時がたち、そして何時も同じだと思っていた景色を変えて行く。同じ人だと思ってもいつの間にか成長し年老いて行く、それが道理だと知っていても、時という名の仕掛けが回り舞台のように何もかも変えてしまうのである。

 何時もと変わらない日常は、有り得ないが、それでも何時もと変わらない日常の仕事をこなして行く。それが人間の与えられた営みである。