物理学的半減期

 福島原発から今観測されている、131ヨウ素と137セシウムのことについて書いておく。

 はじめに物理学的半減期という言葉は、不安定な同位元素が多数集まった放射能物質があり、そこから放出される放射線の数(線量率でも同じ)が半分になる期間である。

 これは放射性同位元素が1個あり、その質量が半分になる量ではない。元々の放射性同位元素というのは、物理的に不安定(こう書くと更に理解できなくなるかもしれない)である。

 

 そのため安定な元素に戻ろうとする仕組みがある。その安定な状態に戻る際に放射線を発生させる。それがアルファ粒子であったり、陽子で有ったり電子であったり中性子であったり単にエネルギーを放出するだけであったりする。

 それぞれをアルファ線、陽子線、ベータ線中性子線、ガンマ線という訳である。


 そこで話は元に戻るが、131ヨウ素の物理学的半減期は、8.04日。137セシウムは、およそ30年である。

 

 ここで同じ数の131ヨウ素と137セシウムがあった場合。どちらが単位時間あたり多く放射線(ここではガンマ線)を出しているだろうか?

 両者が同じ数だとしたら、131ヨウ素の方が数多くの放射線を出している。それは、半減期が長ければ長いほど、半分の数になる時間が長いからである。

 131ヨウ素の原子一つが安定した同位元素になるため必ず一つの放射線をだす。それは137セシウムも同じである。

 では、1秒間あたり同じ数の放射線を放出している131ヨウ素と137セシウムが有った場合、8日後の放射線の数はどうなっているだろうか?

 131ヨウ素の場合は137セシウムと比較して半分にその数を減らしている。しかし、137セシウムは、8日前に出していた放射線の数と殆ど変わらない数を放出しているのである。

 今盛んに報じられているベクレルという単位は、一秒間に放出される放射線の数を言っているのである。更に一般的には、その測定値は、どの放射性元素から出ているものかは区別されない。

 それを区別するには、その放射線のエネルギーを専用の装置で試料測定し、そこから出ている放射線の様々なエネルギーのピークを分析することで、それがどの同位元素から出ているものかを知ることができるのである。

 だから、もし仮に単一の放射性同位元素が放出されていれば、外部被ばくの影響を計算するのは簡単だが、今回のように非常事態時に複数の放射性同位元素が放出された場合の計算は容易ではない。

 

 何故このようなことを書いているかというと、放射線は危険でもあり悪いことに存在が目で見て確かめられないところにある。そのためいたずらに情報過多で恐怖を煽るのもまずいが、情報量不足により不安に陥ることも減らすことも必要である。

 今回、放射能汚染されているといわれている地域には、なるべく近づかないようにすることは正しい。しかし、もし緊急の必要性があり長期間に渡らなければ立ち入りは可能である。

 その線引きは、やはり今回の事故に対応している政府が指針を示すべきだろう。