履歴書

 快晴である。空を見上げれば真っ二つに切られた月が浮かんでいる。気温は、昨日よりも低い。徐々に零下に近づいて行っている。

 人生には、転機は三度あると思う。それはどの人間にも平等に訪れる。それがどのタイミングで訪れるかはその人それぞれのものである。

 その転機を上手く使い、人生を有意義に過ごすことも可能であるし、その転機を上手く使うことができず人生の時間を無駄にしたと思うこともあるだろう。
 
 そして、その転機の最たるものが転職だろう。
 毎年、職員採用に係っているのだが、送られてくる履歴書にも、その送った人の人生が凝縮されているのだなと思う。新卒の履歴書には、まだその人の中にある歴史は出てきては余り滲んではいないが、中途採用となると、その人たちの人生の色々な綾が書き加え始められる。

 その職歴の一行一行に、この人は、どのような生活を送っていたのか、更にどんな事情で前職を離れたのかすごく興味が沸いてくる。
 
 当然履歴書の書き方一つで、自分がどうして応募してきたのかという思いを感じることができる。

 余り偉そうなことは、言えないのだが、履歴書の書き方を見てやはり篩に掛けるのは仕方がない。多数応募されて来ればそこで落とさなければ、絞り込めないからである。

 ・字は手書きで一字一字きちんと書く

 たまに、プリンターで印字した履歴書が送られてくるが、印刷された文字にその人の人柄は滲み出てこない。その人の書いた文字が何か性格を表しているような気がする。

 ・職歴
 
 これは、きちんと書くに越したことはない。ただし、余りにも短期間で転職を繰り返しているような職歴欄は、その人の信用度を下げてしまう。
 採用する方も、余り転職が多い人は好まれない。何故なら短期で退職されてしまえば、その間、教育訓練した投資が無駄になる恐れがあるからである。
 だから、転職するなら1、2回、更にその前の職場勤務が3年以上勤務しているのが最低条件だろう。2回としたのは、前職の会社が倒産したとか、結婚退職があるからで、なるべくなら少ない方が良い。

 もし、転職回数が多いのなら、その間にやはり何らかの実績が必要になるし、そこで得られたスペシャリストとしての経験値が高い必要がある。

 ・志望理由

 ここも、書類選考の上で第一関門である。最低でも、美辞麗句を並べて書く方が良い。たった一行で動機を書いて終わりなどというのは、真っ先に落とされてしまうので、できるだけ文字を書く必要がある。

 この部分の文章は、概ね定型文かしているところがあるため差を出しにくい。もしここで自分をアピールしたいのなら少しひねりが必要である。しかし、やはり人は考えることが同じで、そういったひねりを効かした書き方をしてもそれが定型化している場合もある。

 ・特技

 この辺りも、見ているのだが、ここはその人の努力の結果だから書くに越したことは無い。しかし、余り話を盛りすぎると採用された後にがっかりされることがある。
 特に、情報系の特技がそうで、Officeなどの検定を取る人が多いが、その能力レベルは、面接のときに正直に話した方が良いだろう。面接で得意ですと言って採用された後、その能力にがっかりさせられることもあり、その後の仕事にも影響する。
 ただし、誰からも認められる能力があるなら、その能力は書くべきだろう。

 これは、個人的な感想なので全ての採用担当者がこう考えているわけでは無いだろう。まあそれぞれその担当者、その職場のノウハウのようなものがあると思う。

 ただ、履歴書だけで採用されるわけでは無い。面接すると履歴書を読んだ印象と全く違うという人もいるので、そればかりは判らない。しかし、面接でもその人となりは充分には判らないので、もし最終的に2名の内一人採用しなければ成らないとしたら、履歴書の中身で判断することも多い。

 やはり、履歴書は、その人の人生の一端を明らかにしてくれる大事な記録だという事である。