インフラ危機

 晴れ、気温は14度。今日は夏日に近い気温に上昇するだろうと天気予報番組で伝えていた。

引用 産経新聞http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/131001/ent13100108120002-n1.htm

放送批評家懇談会が優れたテレビ番組などに贈る「ギャラクシー賞」の8月月間賞が発表された。受賞作は次の通り。NHKスペシャル「調査報告 日本のインフラが危ない」

 

 日本に於いては、阪神淡路の大震災の際に高速道路の高架が落下した映像の記憶がまだ残っている。しかし、あの崩落も地震という強度の力が掛かることによって引き起こされたものである。そしてそれ以外の最近の例として笹子トンネルの天井崩落事故があった。

 作った後に何の整備をしてこなければ、そういった建築物は年数が経てば経つほど劣化して終いには崩壊する。日本の木造建築もそうであるが、100年という長い年月が経ってもそのまま立ち続ける建物は、常に手入れされているものだけで、人間の手を離れた木造建築物はあっという間に朽ち、そして残骸のように成り果てる。その景色は、JRなどの車窓から眺める景色に現れる。

 「建築物には手入れが必要である」こう書くと簡単であるが、実際巨大建築物の手入れは大変手間のかかるものである。例えば風によるさびやコンクリートの外壁に染み込む雨水などは、徐々に建造物に寝食を与える。それを有る期間ほおっておくとたちまち腐食や劣化が始まり、それをまた同じ状態に戻すにはその部分を新しい材料に置き換えるしかなくなる。実際それは簡単な事では無く、取り換えるよりも新しく作り直した方がコストは安くなるという現象が起きる。

 強大な建築物のため、その危険な個所は多く、もしそれが崩壊すれば人間に被害を及ぼす危険性も高まるわけである。

 そのインフラの危険性を伝えたのが上に上げたNHKスペシャルの番組であった。今、日本の高度成長期に建てられた建築物はそろそろ耐用年数に近づきつつある。その整備には、当然人とモノとカネが居るのだが、そのいずれもが不足しているのである。整備に必要な設計図、それを作り上げた技術者、そして公共工事に必要な予算である。

 この先20年もすれば、限界集落と呼ばれる地域の社会資本整備は立ちゆかなくなる。それは厳然たる動かしがたい予想である。北海道のこの広大な大地をくまなく網羅したように見える道路、橋、ダム、後は送電網、電話網など、全てこの先必ず作り直したりする必要があるのだが、それに掛ける資本がどこに蓄えられているかという現実に直面するだろう。

 その発端が、JR北海道の問題である。この先、北海道を結んでいた鉄道網も、今回の事故を契機に縮小化が進むだろう。その理由の一つが高速道路網の発達である。鉄道を利用しなくともバスなどの乗り物である程度の人間を鉄道と同じように運べるならその競争は価格という事に成るが、現在のところバスの方が鉄道より割安になっている。競争力を失えば、この先北海道の末端まで鉄道を整備する必要性は薄くなる。それは、これは未来の現実である。

 この先日本の社会資本整備の不安は、北海道も例外なく向き合う事に成る。きっと数年もすればJRは北海道では旭川、釧路、帯広が北と東の限界となるだろう。それ以外の札幌近郊と函館を結ぶ路線が整備されていれば良しとされれことになる。更にこの先、札幌オリンピックが誘致されれば、札幌近郊の地下鉄網が千歳、小樽、岩見沢辺りまで延伸されれば、JRの利用率は更に下がり続ける。その前に、今回の事故を切っ掛けにJR北海道は採算路線重視に成るだろう。

 そして引き続き起こるのは、北海道の限界集落の色分けである。今までならかろうじて鉄道が通る駅前は限界集落化を免れてきたが、今後はそれも無くなり、高速道路の周辺地域だけがかろうじて生き残ることになるだろう。

 もしその間に、日本や世界的な食糧危機が訪れればまた別の話であるが、それが無ければ北海道は徐々に蝦夷と呼ばれた景色に戻り始めることになる。