医療再編

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 4月消費税が上がり、更に医療改定が行われた今年、医療機関にとっては厳しい時代に突入した年である。

 まず、医療改定で実質マイナス改定であったこと。厚労省は、消費税の上昇分を織り込んで改定を行ったと言っているがとてもそんなことでは無い。

 

 厚労省は、自分たちが描く医療プランの元大きく舵を切ってきた。それは、病床再編という方向転換である。その方法の一つとして7対1看護という制度を作り、急性期病院と慢性期病院の線引きを行おうとしたが、その部分の基準が甘く、看護師数さえ充足すればクリアーできる基準だったため、普通ならそこに向かわなくて良い病院もその基準を取ろうとした。

 

 そのため何が起こったかというと、看護師不足である。地方からどんどん看護師が去って行き、その確保に行き詰る病院も出てき始め、看護師不足による病棟閉鎖が増え始めた。看護師が今後も過剰供給されるならそういった問題も解決できるが、看護師自体の離職率が高い事も相まって需要と供給のバランスは崩れたまま放置されてしまった。

 更に、7対1看護を取ることで一時的に収益が上がり、病院は他の産業が不況にかかわらず黒字を確保できたため、厚労省の方針とは真逆に急性期を標榜する病院が増えて、慢性期病床の数が不足し始めることになってしまった。

 そして今年の4月から急性期病床を減らす方向に舵を取られてしまったから大変である。それまで漫然と7対1を標榜して経営していればある程度の収益が得られ経営できたが、基準が厳しくなると経営が立ち行かないと予想される病院が増えてきている。

 それに追い打ちを掛けてしまったのが消費増税である。病院で購入する医療材料に対して必ず消費税が掛かるが、その医療材料を使用しても消費税分を請求することができない。その分は、医療点数で補てんしているというのが厚労省の言い分だからである。

 医療材料も実は、購入価格は同じ製品であっても病院それぞれで異なった価格で購入しているが、医療に使われ請求する段階で全国一律の料金で計算される。その病院ごとの努力次第で利ザヤを稼ぐことができるのである。逆に言えば、そういった利ザヤで病院経営は成り立っていたと言っても良い。

 しかし、その利ザヤを稼ぐ努力をしても自動的にそこから消費税分は減収になるわけで、いくら補てんしたと言っても大きな減収になるわけである。

 今後、経営不振に陥る病院が増えてくるだろう。厚労省もそれを見込んで政策を進めている節がある。その一つが、持ち分無しの医療法人に簡単に移行できる政策である。これは、まさしく病院が潰れる前にどこかに吸収されやすいようにするための政策である。表向きは病院継承時の税金対策という名目はあるが、端的に言えば病院を売り買い出来やすいようにするためと考えて良い。

 そのため、今、裏で起きているのは、大きな病院グループによる病院吸収である。これに関しても厚労省は歓迎している向きがある。それは、何よりも大きなグループ病院ほど経営の効率化が行われており、放漫経営による病院閉鎖を起こしにくいし、そういったグループは、地方の経営不振の病院を立て直ししてくれるあるいは経営参画してくれるからである。これなど、地方の医療過疎に対して何の打つ手を持たない厚労省としては願っても叶ったりなのである。

 だから、今回問題となった徳洲会の選挙違反に対して何らかのペナルティを課さなければならないはずなのに今現在病院取り潰しなどを行わない所を見ると、徳洲会グループに対して大きなペナルティを課さないという事だろう。

 今後、今回の病床転換の方針と同時に、個人経営の病院は軒並み再編の波を被ると考えて良い。その中で生き残るとしたら優良経営の一部の病院のみであり、それ以外の経営が危うい所は軒並み吸収されていくことに成ることは間違いない。それが医療費増大、医療過疎を防ぐ手段と厚労省は考えているだろう。

 更に、もう一つの話題は、日本人間ドック学会の正常値の見直しだろう。これについては明日以降に書くことにする。