正常値の問題

 曇り、雨は上がった。気温は、10度。寒く感じるのは、暖かさに体が慣れてしまったからだろう。

 昨日の続き。

 引用 産経新聞http://sankei.jp.msn.com/life/news/140405/bdy14040500370000-n1.htm

人間ドックの血液検査で「健康」の基準とされる値について、日本人間ドック学会などが作る専門家委員会(委員長・渡辺清明慶応大名誉教授)は4日、現在の基準より緩い新たな基準値を発表した。男性の中性脂肪や男女のLDL(悪玉)コレステロールの上限を大幅に緩和。ただ、基準値をいくつに設定するかは人間ドックの実施施設に任せられており、新たな基準値がどの程度浸透するかは不透明だ。

 少しの波紋を引き起こしたが、関連学会がこの報道に対して異論を述べたことから急遽日本人間ドック学会が以下の声明をだした。URL

一部抜粋

一般的には基準範囲イコール正常値あるいは疾患判別値と理解されるケースがしばしばある。そのため、基準範囲が一人歩きし、疾患の診断や治療に影響を与える可能性がある。

 ここで設定した基準範囲はあくまで上記定義に基づいて、人間ドック受診者の検査データを用いて予防医学的な観点から設定したものである事をよく認識して頂きたい。したがって今回の基準範囲の人間ドックに於ける運用に関しては今後の本学会及び健保連にて充分議論した後に進めていくべきと考える。さらに今回のいわゆる健康人のデータを5~10 年間追跡調査を行い、基準範囲の妥当性を検討する必要がある。

 反響の大きさに驚き行動したことが明らかだが、今後、どのように矛を収めるのかそれとも新たに新基準として推し進めようとするのか注目である。

 今回の発表は、日本の医療の方向性を変え得る可能性があった。

 それは、今まで厚労省が推し進めて来た、不健康になる前にそれを予防するという方針である。その一つがメタボ対策であった。そのメタボ対策も旗を振ったがいいがその後の政策が不透明になってしまった。

 今回の件は、それに対してどういった対応を取るかで今後の医療費の増減のさじ加減を握る話題と言って良い。

 例えば、今までの高血圧の基準でいえば、血圧の上の正常値が130未満だとしたら130以上の人は高血圧と見なされ、医師によっては降圧剤の処方を始める。もし、今回発表された上の正常値とされる147とされたならば、当然130から147の範囲の患者は高血圧の治療を開始することは無い。

 そうなれば何が起こるかと言えば、高血圧薬の市場の縮小である。どの程度の数がその対象に成るか不透明だが、もしかすると5割程度に達する可能性もある。これは、製薬会社、内科の医師にとっても死活問題になるだろう。

 更にこれに自分の感想を付け加えるなら、上の血圧が180程度であるなら治療をしていなければならないが、150程度なら降圧剤の処方が必要なのだろうかと疑問を感じる。このままいけば間違いなく立派な高血圧症になるだろうが、降圧剤は、その進展を食い止める治療薬では無い。あくまでも見かけ上の血圧を下げるためで対処療法薬でしかない。

 本来なら、血圧を上げる原因、動脈硬化であり腎臓、内分泌異常であるわけだからその原因を取り除いて初めて治療と言える。降圧剤は、その辺りの原因を突き止めることなく安易に処方されがちになるからである。

 患者側も、130以上は高血圧症であると言われれば、何となく正常値に持って行きたくなり、症状が精神的なものに影響されたものでも大げさに捉えてしまう事もあるだろう。もし、正常値上限が147であるなら130前後であれば気にすることがないと理解できるだろう。

 そもそも、血圧は加齢とともに上がるものである。これは、人間が老いることと相関している。動脈硬化が進み血管が固くり末梢の血管が細くなれば、末梢に血液が到達するように機能するために血圧が上がる。そうでなければ末梢に血液が十分に届かないからである。そういった人間本来の機能を抑制する方向に働いている物を無理に下げてしまうと何が起きるかというとやはり部分部分で血液が足りないことが起きる。それが脳梗塞であったりする。

 ただし、血流が十分にある部分にとっては、血流が多くなるわけでそれが症状を発生させる。そういう意味で、痛しかゆしの状態であるということになる。

 今後、この問題は、慢性疾患をどのように治療するか、健康な人の線引きをどこに持っていくかで国民の医療費は大きく変動する。今後、こういった議論は表に立って堂々とするべきで、もっと多くの意見を聞く必要があるが、一部の利益を得る人たちが言論を封じることがないようにして欲しいものである。