赤い月

 晴れ、気温は3度。


 昨日は、月蝕があり赤い月を見ることができた。日蝕と少し違い暗い夜空に光る月なので、何か劇的に風景が変わることは無い。 

 丁度、月の左下の方から辺縁のはっきりしないもので徐々に蝕まれていく感じで、日蝕の辺縁がハッキリした欠け方ではない。

 日蝕が太陽を空に浮かんだ月が覆い隠すのに対して、月蝕は、月が地球の影に入るという違いである。影の辺縁が少しぼやけて映るし、全てを覆っても地球の影が全ての光を遮断するわけでもないからである。

 そして、午後7時を過ぎたあたりから殆ど月が隠れ、赤い月が夜空に浮かび始めた。

 月が黒い影で蝕まれ、赤い月に成る様子を見ていた昔の人は、この天体ショーを不吉なものと感じたことは納得できる。闇夜に浮かぶ満ち欠けはするがそれは一日毎の変化であり、短時間で欠けて行き赤く夜空を照らす姿は、人間に対して警告を発しているような気持にさせられただろう。

 その際に天変地異が起これば、天上の神様のお怒りだと思う事だろう。

 そこに陰陽道というものにつながるというのも面白い。それは映画やマンガでお馴染みのものである。

 庶民の不安を解消するために生まれたと思われる陰陽道は、遣唐使、遣隋使という当時の中国との交流から伝来してきたものらしい。その後、平安時代に政府の機関の一部として機能していたらしい。

 今回の月蝕の時期を占う事を天文道と呼び、こういった事象が政治に影響を及ぼすことを防ぐ行事を執り行うなどの言うなれば呪術と呼ばれる範疇のものであった。

 言うなれば、天変地異を呪文で防ぐことができるかという事に成る。それが出来ることを証明したなら、それはそれで大変なことであり、下手をすれば時の権力者をも従えることが可能だったあだろう。

 しかし、その行為自体がまやかしであり、何の科学的根拠が無いために力を持つことは無かった。もし今の時代でもあれば昨日のような夜は、日本各地で呪文を唱える行事が行われていただろう。

 そんなことを考えさせる天体ショーであった。