凍結精子で夫の死後出産、父子関係認知せず

凍結精子で夫の死後出産、父子関係認知せず

 読売onlineの記事を一部引用させていただきます。

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判決などによると、女性の夫は白血病の治療で放射線照射を受ける前に精子を凍結保存し、1999年に死亡。保存時には、「死亡した際は凍結精子を廃棄する」「死後生殖は行わない」などの条件に同意していたが、女性はその後、夫の死亡を病院側に知らせないまま凍結精子を受け取り、別の病院で体外受精を受けて妊娠、2001年5月に男児を出産した。

 女性は、男児を夫婦の子として出生届を提出したが、夫婦間の子とは認められないとして受理されなかったため、認知を求めて02年に提訴。1審・松山地裁は請求を棄却したが、2審・高松高裁は、「自然血縁的な親子関係に加え、夫の生前の同意もあった」と認知を認めたため、国側が上告していた。


 最高裁で、親子と認めないと言う判決が下された。

 今後、凍結精子を用いて子供を出産した場合、どのような条件で親子関係として認めるか法律を作ることが必要とされた。であるから、法律が無い現状では、親子関係は認められないと言うことである。

 このことは、人工妊娠や、精子の凍結保存の技術が無ければ不可能なことである。その技術が、もう何年も前も確立していて、そういう状況が起こる怖れがあるという時点で国が法律を定めていなければならないことだった。確か、この問題は、新聞等で随分以前より報道されていたように思う。

 今回の件、遺伝子上は明確な親子でありながら法律上親子ではないと言うのはねじれた問題である。また、普通一般の子供の認知騒動では必ずDNA鑑定で親子関係を認定することから言っても、では本当の親子関係は何なのか考えさせられる。

 このケースの場合、どのような事情が有って人工妊娠を選んだのか新聞の記事だけでは不明である。

 この場合ではないが、こういったことが今後も起こるとすれば、
 良い方に考えれば、最愛の夫との間に子供が欲しかったから、止む終えず死んだ後に行ってしまったという考えの一方、悪い方に考えれば、死後遺産相続と言う利益を得るために行うという場合も考えられるわけである。

 その場合、善意に解釈すべきか、悪意に解釈すべきなのか複雑なことになる。何故なら、片方の親権者である夫は既にこの世に居なく、そちら側の言い分を聞く機会は永久に無いわけである。

 今後可能なら、両方の同意を得た契約書を作成し、公的機関に提出してその契約が有効だということを証明してもらってから、人工妊娠を行うと言う手続きが必要になるのではないだろうか。また医療機関側も今後こういった複雑なケースに遭遇する場合もあるだろうからその場合、その医療行為を行うか一医師の考えだけではなく、病院全体での合意が必要になってくるものと思われる。

 片一方では、人工妊娠してでも子供を欲しがるケースがあり、片方では気軽に人工中絶してしまうケースもあり、その両方が同じ病院と言う中で行われる。正に矛盾した世の中であると思う。