多剤耐性菌の問題

 晴れ、高い空にうろこ雲が群れをなしている。空気は澄み秋らしい天気である。

引用 毎日新聞http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100904ddm041040143000c.html) 

帝京大病院:多剤耐性菌9人死亡 報告遅れ、対策後手 「散発的」と楽観

 ◇昨夏に発生、感染拡大

 帝京大病院(東京都板橋区)で3日発覚した、多剤耐性菌アシネトバクター・バウマニによる院内感染。46人もの感染者を出した背景には、病院内での情報共有が遅れ、拡大防止策が後手に回ったことがある。また、国や都への速やかな報告を怠り、8月にあった国などの定例の検査でも院内感染の事実を申告しなかった。同病院は高度な医療を提供する病院として国が指定した「特定機能病院」で、ずさんな対応が問われそうだ。

 上記記事、確かに病院の対応は不味い、しかしそれがあったとしてもこの記事は、悪意があるか又はこの事件そのものをあたかも一病院の中の出来事ととして矮小化させようとしている。

 そうでないとしたら記事を書いた記者が「木を見ずに枝葉を見て」書く、これを書くには相応しくない人間が書いているのだろう。


引用 朝日新聞http://www.asahi.com/international/update/0817/TKY201008170101.html?ref=reca

耐性菌、医療ツーリズムで?拡大 インドから欧州へ

 【ワシントン=勝田敏彦】ほとんどの抗生物質が効かない多剤耐性細菌がインド、パキスタンから欧州に広がっていることがわかった。安価な医療などを求めて世界を旅する「メディカルツーリズム」が拡大を助けたとみられる。英国、インド、パキスタンなどの国際チームが論文を発表したが、インドからは反発も出ている。

 英医学誌ランセットの伝染病専門姉妹誌に先週掲載された論文によると、チームはインド、パキスタン、英国の患者から分離された大腸菌などを分析。幅広い抗菌効果を示す抗生物質カルバペネムに対する耐性遺伝子「NDM1」を持つ細菌の試料をインド、パキスタンから計143例、英国で37例見つけた。

 カルバペネムは重症の感染症の治療の「最後のとりで」ともされる重要な薬。耐性菌の発生を防ぐため、乱用は強く戒められているが、論文によると、インドでは処方箋(せん)なしで大量に使われ、耐性遺伝子発生の温床になっているという。

 今、多剤耐性を持った細菌が現れ問題となっているが、既にこの事は、ずっと以前より医療関係者の間で問題となっていた事である。実際細菌、複数の抗生物質に対して耐性をもつ緑膿菌黄色ブドウ球菌などによる入院患者の状態悪化が起きている。

 大腸菌緑膿菌などの菌は、健康体の人間に付着或いは腸内に存在する。しかし症状が現れないのは、人間が持つ免疫力により一定数以上増殖しないからである。細菌数が体内である一定以上のレベルまで増殖しないと症状は現れないため一般的には問題に成ることはない。

 しかし、この菌が免疫力の低下した人、例えばがん患者などで増殖し、それが多剤耐性菌だと非常に厄介で、効く抗生剤が一つしか無いということも起きうる。また上記の記事のようにすべての抗生剤が効かない細菌が現れている。

 何故このようなことが起きるかといえば、それは、自然環境では低濃度で存在する物質を科学の力で大量に合成し高密度にされた抗生物質を安易に使用したことに他ならない。

 医療現場でも、医師が耐性菌を産むことを知りながら、安易に複数の抗生物質を患者に投与してきた歴史がある。

 確かに医師は、その一人の患者を治すためという、正当な理由付けをして治療をするのだが、そこから生まれた多剤耐性菌は、その後に病気になる人間の命を奪う結果になるとは考えていない事が多い。

 更に悪いことに、人間が使っている抗生物質を人間が食用とする、家畜、養殖魚に大量に使い出したことでもある。それは、一種の製薬会社の共謀による犯罪でもある。

 国或いは製薬会社が用途を制限するべきなのに、製薬会社は利益のためにその流通に無関心を装った。

 また、国民の抗生物質の安易な乱用は、排尿により下水中にも観測され、下水処理場でもそれは除去されず川に放水されている状況で、そういった環境からでも耐性菌が増える状況を作り出している。

 もう既に状況はアウトブレイク寸前であり、この状況を変えることは不可能だろう。今後院内感染による死者は普通のどの病院にも起こることである。その原因菌は、健康と思われる人間が運んでくるのだから防ぎようがない。防ごうとするなら、入院棟は、外来と隔離し全ての病室を個室にし、更にそこで働く医療従事者は、患者に感染させないため完全防護服で治療に当たらなければならないだろう。そんなことは現実問題不可能である。

 この問題は、人間が起こした事件である。病院の管理上の問題点を追求するのは構わないが、現実は日本中のどの病院でも起こっている或いは起こりうることである。

 既に医療関係者だけの努力ではこの問題は防ぎ様のないところに来ていることを新聞は少なくとも伝えなければならない。