企業と夢

 晴れ、今日も非常に冷え込んで、マイナス20度近い。吐く息は白く立ち上がり、立ち止まると途端に体の中に冷気が入り込もうとする。この中で、1時間も立ち止まれば凍死しかねない。


 中国の新車販売台数の伸びが止まった。日本も既に新車の販売台数の減少は顕著である。
 日本車が国内で売れなくなった理由の一つに、国内メーカーの販売戦略が余りに保守的になったという事があげられるだろう。
 その一つが、車のデザインである。最初は、売れた車のものまねを繰り返すうちに独創的なデザインを生み出せなくなった。その反面、余りにも独創性にこだわるあまり本来の車の持つスピード感、快適性というものを失ってしまった。

 このままでは、日本の自動車メーカーの将来は暗い。


 新しい企業というのは、夢を持って生まれてくる。その夢の実現のために社員は一丸となって突き進む。
 そして夢を実現をある程度達成した後は、その実現したものを如何に守り続けて行くかの時代になる。
 
 初めは攻めであり、最後は守りに入るわけである。

 守りに入ると企業は脆い。新しいアイデアは、自分たちの今までの秩序を壊すものとして忌み嫌われ、極端な場合排除されていく。
 この中で生き残りを掛けるのは、並大抵の努力なくしてはできないのは、例えばその事業拡大と同時に、方向転換するには、社員の数が創業当時と比べて飛躍的に増加している。
 創業当時なら方向転換をしようと思えば簡単にできた人数であっても、安定期に入った企業はそれなりの人数を抱え、末端までスムーズに意見が届かない。そうすると末端で都合の良い解釈を行うようになり統率が乱れるわけである。

 夢は非常に大事だが、それを達成した後の方向性は非常に大事である。夢を達成した時がゴールでもあるが、また新たなスタートの始まりである。

 もうひとつ例にとるなら、コンピューターの世界では、マイクロソフトが夢を失った企業の一つだろう。
 コンピューターが生まれ、パーソナルコンピューターの時代に入った時から、これまでマイクロソフトの一人勝ちであった。
 それは、多くの人に使われるOSやofficeに代表される、コンピューターを使うための欠かせない道具であった。

 しかし、携帯端末がインターネットに気軽に接続できるようになると、今まであれだけ力を誇っていた企業なのにすっかりその看板は色あせ、自分たちの利益を必死に守ろうとする時代遅れの企業に成り下がってしまった。

 それは使う人に夢を提供する企業ではなく、如何に使用者から利益を吸い上げるかが勝負の企業に代わってしまったという事である。
 その変化を既にユーザーは敏感に嗅ぎ取り、既にマイクロソフト離れは確実に進んでいる。後数年すれば、あれだけの権勢を誇っていた企業の面影を失うだろう。

 10年前にそうなることを誰が予想していただろう。

 そうして歴史は繰り返される。その中に埋もれて行くことが幾多の企業の宿命と言える。今、安定的な企業にいる人も、10年過ぎれば企業が存在しないかもしれない。また安定的な職業とされる公務員も、その変化の流れは既にそこまで来ている。どこにも永久に安定なものは無い。