曇り、夜に降り積もった雪もみぞれ状になっている。それ程気温は高く零度近くにはなっている。

 一人で道を歩く時には、音楽を聴いているのだが、もう10年くらい前にはやった歌の歌声の素晴らしさにいつも感動する。今現在の彼女の歌声も好きなのだが、10年前に出していた声の方がつやっぽさが格段に上である。歌声に年齢は却って邪魔なのかもしれない。

 歌は歌いこむほど上手くなる。しかしその上手さは、同時に技術的な部分も含む、それは、自分の歌を上手く聞かせてやろう、聴く人をうならせてやろうというあざとさと紙一重の所にある。

 この前、ビリージョエルのニューヨーク公演の放送がWOWOWであった。ニューヨークの満員のシェイスタジアムで行われた公演は、却ってビーリージョエル自身の年齢を感じさせる姿を強調しているかのようだった。

 その歌声は、若い時と同じように聞こえるが、やはりその声そのものは時が過ぎ去ったことを感じさせる。それでも今回初めて聞いた人は、その歌声に納得するだろう。
 あの少し哀愁を帯びた歌声は、聴く者をその歌声の世界にいざなう。そして、昔その歌声を聴いた人は、記憶がその時代にタイムスリップする。

 歌は、それぞれの人々の中で消化されそして別なものに生まれ変わる。その思い出だけは不変だと思っていてもいつの間にか微妙に姿を変える。しかし、デジタル録音された歌声だけは何時までも劣化せず再生される。