昨日

 晴れ、気温も朝方は、昨日と同じくらいである。今日も日中は暑くなりそうである。

 

 昨日の夜は、出かける用事があり、用事を済ましたあとどこにも寄らず電車で帰ってきた。

 夜の8時の電車の中は、サラリーマンや学生が乗りこんでおり、一人一人それぞれスマホをいじったり雑誌や本を読んだりしていた。

 その同じ電車に乗り合わせてはいるが、それぞれ自分の人生を歩み、そしてこの同じ場所にいるのはまさしく偶然であった。

 もし自分が、この前であったり、この後のであったりすれば、同じ空間を共有することは無かったはずの人たちである。

 乗り合わせた老若男女、それぞれの時の流れが偶然この電車の車両の中に紡ぎ合わさったようなものである。

 しかし、その同じ瞬間であっても、誰かはそこから出て行き、また新しい誰かが加わりながらレールの上を電車は進んで行く。

 もう既に日が沈み、電車の窓には車内の人影が鏡のように映し出され、その影の間から街の明かりが過ぎ去って行く。

 その明りの一つ一つに、人間が存在する。

 そして、自分と全く異なる生活を歩んでいるのである。

 何かを考え、何かを行っている。

 その無数の思考の塊を感じて心が締め付けられるようになる。

 やがて見慣れた景色が、暗闇を通して判るようになる。

 

 そして自分は、その同じ共有空間から抜け出し、先ほど見ていた明かりが点く馴染みのある場所に戻って行くのである。