ドーピング

 曇り、霧のような水滴が顔に当る。少し遠くを見ると所々日が差すところもあるというファジーな状態である。

 スポーツ競技のニュースで目立つのはドーピングの話題である。持久力や筋力が他の人より優れていれば、大会で優勝できる可能性がある。そして、その結果が自分の人生に優位に働く、或いは自己満足を得られるのならドーピングは麻薬と同じである。更にその選手たちの取り巻きも優勝の恩恵を預かることができるならドーピングを進めるようになるし、賭け事の対象になればマフィアなども近づくことだろう。

 そして最近目立つのが、持久力を高めるEPOと呼ばれる薬物の使用である。EPOは医療で用いられている薬で、透析患者の貧血の予防のために良く使用されている。

 

 その薬が何故、持久力を高めるのに使われるかと言えば、運動の際、筋肉が消費する酸素が不足すると運動能力は低下する。その低下を抑えるには血中に酸素を運ぶ役目をする赤血球が大量にあれば良い。その赤血球を作りなさいと促す作用があるのがEPOである。

 元々人体に存在するホルモンなので、自分の体に元々存在したものかそれとも故意に外部から加えられたかを調べるのが以前は難しかったが、最近は、外部から加えられたものか判定できるようになり、最近の摘発につながっている。

 ではEPOを使い続けるとどう成るかというと、病気の中に赤血球が多くなる病気がある。それを赤血球増多症または多血症と呼ぶのだが、その病気になると、ひどくなれば脳血栓心筋梗塞を引き起こし易くなる。EPOを日常的に使い続けるとそういったリスクが増えることになる。

 しかし、そのリスクと自分の名誉や金が絡めば、どこかに弱さを持つ人間は、ドーピングに走ることになる。それは人間の弱さと表裏一体の所にあるからである。

 

 上に述べたように、持久力系のスポーツはEPO、筋力系はステロイド、ヒト成長ホルモンなどの筋肉増強剤に分かれる。

 自転車のロードレースなどは、持久力と筋力が求められるため両方となり、最近ツールドフランスなどで摘発が続いている。

 今後スポーツの世界では、ドーピングが蔓延することだろう。それは、人が弱い生き物だと述べたが、後、コンマ何秒の差でメダルや出場が決まる、それには薬を使えば可能と言われれば、その誘惑に勝てる人間はそうそういない。それを使わないというのも精神力の戦いになる。片方は、甘言で近づくのだから悪魔のささやきに近い。

 それに対して、ドーピング対策として、生体パスポートという取り組みが始まっている。血液の履歴を記録することで異常値を見つけやすくする方法である。

 しかし、今後遺伝子操作も加わった生まれながらにして赤血球が多い子供を作り出して記録を狙わせるというような行為が将来生まれてくる可能性もある。人間の欲は果てしない。