夏前

 晴れ、気温は11度。

 いつも走る道路脇の雑草が勢いよく成長しているのを見ると夏がそこまでやって来ていることを感じる。数週間前までは地面が見えていたのに既に背丈は膝近くまである。それは、庭の草花も同じで、今まで蓄えていたものを全て吐き出すように成長している。それは生命のたくましさを垣間見せる。

 そしてそれとは逆に、周りの木は緑の葉を生い茂らせようとしているにも関わらず枝に葉を付けようとしない木がある。既に何かしら枯れたような兆候があるのなら不思議はないのだが、その姿は、まだこれから成長を続ける様子を持っているのにもかかわらずである。本当にそれは突然やってきたような感じである。

 その姿は、何か人の生き方にも思えてくる。若若くして健康そうだった人が突然病に倒れるようなものである。植物もそうであるように人も同じようにそういった時を迎える。多くの人が同じように生きているようで実はそうでは無かったという事である。

 今、活発に成長している草花も実は冬前には枯れる運命が決められている。今成長しながらも次の世代のために球根であったり種であったりを自分の身にひそめながら、精一杯伸びようとしている。その輪廻は永遠に続く。