個人情報の問題

今回のJR西日本の脱線事故において、個人情報の第三者への提供に関して問題が起こった。

 個人情報保護法が施行される以前は、自由に情報を提供してきた事が、法律に則り情報提供を被害者の方の同意を取ってから行ったため情報提供が遅れた医療機関があったようである。其れに対して情報提供が遅いと言う非難があったようだが、今回の法律どうりに個人情報を提供する場合、まず意識があり自分の意思で個人情報の提供の可否を決められる場合であれば、同意が必要である。意識が無く、自分の意思で判断できない場合などは本人の同意を得ずに第三者に提供可能であるとなっている。

 その第三者も厳密に言えば不特定多数の者を言うのではなく、家族或いは親族などを想定している。

 しかし今回の場合、電話などで病院に紹介の電話がかかってきたときに、その電話をかけてきたものが家族、或いは親族であるかなどは医療機関側では確認する事が出来ない。

 例えばその個人情報を公開することで不利益をこうむる人も出てくる可能性がある。その場合、公開した側の責任となるはずである。逆を言えば、被害者の同意無しに個人情報を公開した医療機関があった場合其れを行った判断の理由を聞きたいものである。

今回の問題に関して関連したニュースを引用させていただく。既にWEB上からは消えてしまったものもあるため本文の一部、又は全文を引用させていただく。


『事故直後の負傷者情報 医療現場が一時混乱』 (5月13日 神戸新聞ニュース)

尼崎JR脱線事故で、負傷者を受け入れた病院が四月二十五日の事故当日、患者の名前など個人情報の扱いをめぐって一時、混乱した。各病院には家族や知人のほか、自治体や報道機関などの問い合わせが殺到したが、個人情報保護法が四月に施行されたばかりで慎重にならざるを得なかった。同法には「人命、身体または財産の保護のために必要な場合」の例外規定があるが、その趣旨が十分に知られていないことが浮き彫りになった。

 神戸新聞社が五人以上の患者を受け入れた十五病院を対象に調べたところ、回答があった十四病院はいずれも、家族からの個別の安否確認に応じていたほか、JR西日本や自治体などにも患者名の情報を提供していた。
(略)
厚生労働省は、今回のような混乱状態では病院が本人の同意を得るのは難しく、安否情報を広く知らせる意味合いは大きいとして、法の例外規定に該当するとの立場だ。「情報を基に本人が家族に会えれば、両者の安心や適切な治療につながる。病院に搬送されていないという情報も、現場で捜索活動が必要だという根拠になる」と説明する。

 『意識不明患者の情報は提供−事故時の病院対応で厚労省』(5月13日 SANSPOニュース速報)

 尼崎JR脱線事故で、負傷者が搬送された一部の病院が、個人情報であることを理由に意識不明患者の特徴などをJR西日本などに提供しなかったことについて、厚生労働省の岡島敦子審議官は13日の衆院国土交通委員会で、情報提供してもよい例として医療機関に示していくことを明らかにした。市村浩一郎議員(民主)の質問に答えた。

 市村議員は、事故当時乗客の家族がJR西日本に意識不明で搬送された乗客の情報を求めたのに対し、同社が「病院が個人情報保護法を理由に提供してくれない」と回答したことを指摘。「厚労省のガイドラインでは、意識不明の場合、関係機関への提供はできるとしている」と病院側の対応を疑問視した。

 岡島審議官は「(ホームページなどで公開している)ガイドラインQ&Aの中に、事例として加えたい」と答弁した。

 厚労省の担当者は「第三者に情報提供できる例外規定を知らない医療機関もあるようだ。家族が患者を見つけやすくするための情報ならこの例外に当たる」としている。

 『JR脱線、負傷者氏名公表揺れた…個人情報保護法巡り』(5月14日 YOL 讀賣新聞大阪本社)

 兵庫県尼崎市のJR福知山線脱線事故では、負傷者の氏名や安否などを問い合わせる家族らへの対応をめぐり、病院やJR西日本の間で、情報を提供するのかしないのかで判断が揺れた。4月全面施行の個人情報保護法は個人データの保護を求める一方、生命や財産の保護などに必要な場合は例外的に提供を認めており、解釈が分かれたためだ。この問題は、脱線事故を集中審議した13日の衆院国土交通委員会でも取り上げられ、国側は「大事故時の対応を見直す」としたが、あくまで判断は現場に委ねられるという。各機関からは「明確な基準をつくるべき」との声が上がっている。

 ---引用終わり---
 
 今回の国の見解は、個人情報保護法の法律通り、
?意識がない負傷者に関しては、第三者への個人情報の提供は可
?意識がある負傷者に関しては、医療機関の自主的判断で

というのが結論のようである。
?の場合、もし情報を公開したことで不利益を被った負傷者が民事で損害賠償請求の裁判を行った場合責任は医療機関であって国ではないということである。

 ?の場合は、法律に則り患者さんの同意を得てから提供すべきである。多少時間が掛かってもそうしなさいということである。
 色々と個人情報保護に関しては細かいところが自主判断に任されている部分もあり法律としてまだ完成していない印象がある。今後もこういう問題に対しては頭を悩ませる事と思う。