南沙諸島

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 南沙諸島の件、中国の高圧的姿勢と言える環礁の埋め立ては、領土問題と絡めて緊張の度合いを高めている。

 中国が領土権を主張している南沙諸島は、ベトナム、フィリピンなどが領土を主張している島である。日本人は殆ど知らない所と言って良い。

 調べてみると、1938年から日本が領土としていたことが判った。これは太平洋戦争が終戦を迎えた際のサンフランシスコ講和条約で放棄を宣言して以来、この諸島の領有権が確定していなかった。

 あながち日本が関係していないということでもなかったという事である。もし、日本がこのような事態を将来迎えると知っていたらこういったまだ日本の領土だったかもしれない。

 領土問題が解決していないうちに、それ幸いと中国が領土を主張しその島を実効支配するために島の周囲を埋め立てし始めたわけである。

 その方法は、島の周囲に砂を盛り上げコンクリートで固める方法であった。そういえばこういった方法を取った島が日本にもあった。それは沖ノ鳥島である。そのまま放置すれば海から顔を出した部分が浸食で消え去るためコンクリートブロックを投下し周りを埋め立てしたのである。

 今回の問題は、環礁の埋め立てでは無く、領土争いが終結していないのに中国が領有を主張したことである。それがその周囲の国々を刺激しているのであるが、ベトナムはまだ復興途上で、フィリピンは、お国柄そういった事に対して今まで積極的でないため、個のような事態に成るまでほったらかし状態だったわけである。

 ここに、アメリカが口を出してきたのは、やはり中国を将来の仮想敵国と設定したことに他ならない。一時オバマが大統領に成り中国と融和政策を取ったのだが、その期待を裏切り世界に中国の存在を見せつけ始め、アメリカが舐められた状態になってしまった。

 アメリカとて、国内は一枚板では無い。色々な人種が混じりあい一つの国家を形成しているのだから、それなりに意見の異なる部分もある国家である。

 しかし、アメリカが中東やアフガニスタンで良い成果を得られていない状態で太平洋を奪われてしまうと、世界のリーダーである椅子から転げ落ちる可能性がある。

 そういった自尊心の戦いにこの南沙諸島が火をつけたと思う。ただし、戦争疲れしている国民に本国から遠いちっぽけな島に対してそれ程情熱を傾けられるかというと、今後の経済状況が影響してくるものと思われる。

 アメリカから遠く離れた地域に軍隊を送るには相当な経費が必要である。それを負担してくれる国が無ければ到底赤字である。それを補うのが友好国であり、その金庫の一つが日本なのである。

 しかし、この先中国がこれまでの経済力を失えばそれなりの譲歩はあるかもしれないが、今の中国は、一言で言うと魔界である。共産主義から中華主義に転じた現在、国の支配は国民では無く国家主席が支配する王国である。その権力は一見頑強そうだが、何時失脚しても可笑しくない。その権力争いは、ロシアのプーチンに似ている。


 中国とロシアは、習とプーチンに寿命に国の方針が委ねられている。その間は、両国はアメリカに敵対してでも内なる敵を抑え込むために大義名分を欲している。

 中国などは、海外からの投資で既に国内の工業力を整備してしまったのだから、後は、他の国と取引を限定してでも国を運営できる力が付いた。ロシアの問題は、食料だがその解決策であるウクライナを属国化する勢いがある。これに関しては後日。

 もし、中国が世界との交流を絶ち、友好国とだけ生き続けようと画策するならそれも可能な状態で、もし今、アメリカと対立して争っても問題ないと考えられる状況にあると言える。

 そうなれば日本のアジアでの地位を守るため友好国を増やす必要があるし、アメリカも世界に多くの友好国を作りながら中国、ロシアと対抗していかなければならない。

 その一つが今回の南沙諸島の問題である。このまま、無抵抗で中国の領土を見過ごしてしまえば、今後、中国がその力で東アジア全体を占領する可能性もあるわけである。具体的にそれが今の状態では不可能と分かっていても、核兵器を所有する中国にアメリカが表だって敵国扱いするわけもいかないので、取りあえず反撃の為の戦力は確保したいと思っているはずである。

 第2次世界大戦直後の世界の勢力図は、アメリカ、ソ連、ヨーロッパというものであった。それが変化していくのは時の流れであって、その時中国に鄧小平という時代を見た人物がいたからであった。しかし、彼も中国が世界の大国に成ることを望んでいたのは間違いない。その彼が居なくなり、現実主義の世代が台頭し、国力を高めてしまえば当然このような状態になるのは多くの人が想像していたはずである。

 ただし、その指導者が抜け目なく世界に顔を出すことを望んでいたのだが、実際はそうはならなかった。習近平は、中国を土台に世界の王に成ることを望んでいるのかもしれない。

 ただし、先に書いたように、中国の指導者は、今までの流れから言えば意思決定については他の幹部の影響を及ぼせる状態であるから、まず意思決定できる幹部の力を弱めるか仲間に引き入れるかの選択を求められその中で権力争いが生まれるのが常であるから。その足場を固め終わる前に失脚する可能性も存在する。

 いずれにしても平和な世の中はそう長くは続かない運命にある。日本もそういった国際情勢の他に、物理的に国土がぐらついているので波乱がこの先引き起こされるのは待ったないと言える。