民主主義

 晴れ、気温はマイナス1度。空は青空なので放射冷却でぐっと気温が下がってしまった。一日たてばそれだけ冬が近づく。

 今日の朝日新聞に、「華氏911」「華氏119」の監督であるマイケルムーアのインタビューが載っていた。「華氏119」は未見だが、「華氏911」は見た。

 そこで書かれている民主主義は、守ろうとする勢力が弱まれば簡単に瓦解するという言葉が印象に残った。トランプ氏が行っている今のアメリカの政治は、保護主義である。強いアメリカを取り戻すために周りの国を無視しても、アメリカだけが強く生き残る国にしようという考えである。

 アメリカだけと書いたが、実際は、アメリカの中でも優遇されるグループが存在し、トランプの思想に共感する者の集団のみが利益を得られるようにしようというものである。

 それは、支持者の集団の頂点に立ち我が物顔に振る舞う中世ヨーロッパの王国のようなものを作り上げようとしているのである。民主主義が自分の行動の障害になるならそれを変えてしまおう。自分の行動を正当化できる法律に書き換える。あるいは無視してしまえば良いと考える集団である。

 この辺りで勘の良い人は気付く。いわゆる勝ち馬に乗るという言葉である。利益を得られる集団に加われば、明日の糧に困らないあるいは何をやるにしても優遇されると知ったならあなたはどういう行動を取るだろうか?清貧や迫害に耐えるのか、少しでも良い思いをできるところに進むのか?

 多くの人は、そのあたりを考えない。何となくみんながあちら側に行くのだからそれに従うほうが楽なのだろうと考えもなく移動する。多くの人が集団で行動するのだから誰かが道筋を考えてくれるだろうとなるのである。

 今まで誕生した多くの独裁者はそれを知っている。いかに自分の行動がみんなのためになり素晴らしい世界が必ずやってくるかを口にする。今が苦しくともそれは素晴らしい世界に共に選ばれるための試練であるとか、この苦しみは、敵対するあの国のせいであるとか大衆の視線をそらそうとする。

 多くの人間は、その先に明るい未来が開けていると言われれば当座の苦労は厭わない。更に、何百人に一人は何らかの大きなご褒美が与えられそのほかの人間にわずかな褒美を与えておけば、自分も大きなご褒美をもらおうと競争心を生み、それが忠誠心になっていく。飴と鞭を上手に使い分けるのが独裁者の常とう手段である。

 日本が民主主義国家と多くの人が自覚しているうちは良いが、もし巧妙に独裁者の卵が成長すれば簡単に民主主義は崩壊する。今でこそ北朝鮮や中国の独裁政治を笑っているが、それは、もしかするとこれからの日本の未来でもある可能性も存在する。

 歯車が一度回りだせばその勢いは加速する。そしてその歯車はその勢いのために自己崩壊する。それは真理である。