人間はミスをする

 粉雪が気まぐれに落ちてくる。路面は昨日の深夜から降った雪が2,3cm積もっている。空を覆う雪雲で、まだ夜が明けていないような暗さで、街路灯も所々明かりがついている。


 このニュース。
引用 日経ネット(http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20091208AT3S0701607122009.html
 内閣府、GDP確報を3.7%減に下方修正 個人消費に推計ミス
 内閣府は7日、2008年度の国民経済計算確報を訂正すると発表した。2日の公表後、個人消費に推計ミスが判明したためで、国内総生産(GDP)の実質成長率は前回公表の3.5%減から3.7%減に下方修正した。内閣府の津村啓介政務官は記者会見で「あってはならないこと。国民の皆様におわびしたい」と述べ、再発防止策をとる考えを示した。

  • -


 仕事を行っている上で重要なのは、ミスをしてもカバー出来る状況を以下に作り出すかである。
 人間はミスをする動物である。完璧な人間はひとりもいない。そう考えて仕事の体制を作るのと、人間に対して「ミスをするな」といって仕事をさせる事がどれだけミスを起こすかわかっていない。

 良くミスをするからという事で、ミスがないかチェックする体制を作った。最初はうまく行っていたのだが、その内に、初めはミスを起こさないように慎重に行なっていたものが、今度はミスをチェックする体制ができたことにより、ミスをしても誰かがカバーしてくれるだろうと油断するようになり、更にミスをチェックする側も、いつもミスをするとは限らないために徐々にチェックが甘くなり、二重にチェックをすり抜け事故が発生する。
 
 例えばこの事故もその典型である。
引用 朝日新聞(http://www.asahi.com/national/update/1207/TKY200912070370.html
 航空自衛隊小松基地(石川県)で4日、F15戦闘機が滑走路上に胴体をこすりながら着陸した事故で、操縦していた近山省吾3等空佐が着陸前に主脚や前脚を出す操作を忘れ、胴体着陸していたことが空自の調査で分かった。滑走路上で監視していた空自隊員は脚が出ていないことに気づいていたが、近山3佐に伝えなかったという。近山3佐は「脚下げはなされたと思って(滑走路に)進入した」と話しているという。

 空自が機体のフライト・データ・レコーダーを調べたところ、近山3佐は着陸前に脚を出すハンドル操作をしておらず、接地後に操作したことが確認された。脚が出ていない場合に鳴る警報音も着陸前に30秒以上鳴っていたという。空自は「警報音は確実に聞こえる音量で鳴っていた。パイロットが『脚を出した』と思いこんでいたので、警報音に気づかなかったのではないか」とみている。近山3佐は総飛行時間3600時間で、このうちF15は2700時間。上級操縦士や多数機編隊長の資格を持つ。

 また、着陸状況を監視する隊員や管制官も脚が出ているかを確認することになっているが、監視していた隊員は「脚が出されていないことに気づいたが、(無線で近山3佐に)伝えるいとまがなかった」と説明しているという。管制官は「はっきりした記憶がない」と話しているという。

  • -

 この事故には、三つのミスが重なっている。

一つ目は、操縦士が車輪を出し忘れたことと警告音を無視していたこと
二つ目は、滑走路で着陸を確認していた空自隊員が、車輪が出ていないのに連絡をしなかった
三つ目は、着陸時に確認することに成っていた管制官が確認を怠っていた

一つ目は、警告音を無視するということは有り得ないが、もしかしたら何か別の音と勘違いすることもありうる。日頃耳にしていない音であれば警告音が何を意味するのか着陸時の慌ただしい状況で確認できなかったと善意に解釈することができるだろう。

二つ目、三つ目は、幾らチェック体制を取っていても、日頃何事もなく日常的な出来事になってしまった業務そのものが気の緩みを生み、何のセーフティガードになっていなかったということである。

 最初のGDPの統計値もそうだが、ミスをすれば重大な影響を及ぼす問題を安易に扱いすぎているのだと思う。
 例えば、この問題が家計簿の計算ミスなら笑って済まされるだろうが、国の統計値を扱う部署がミスを犯してしまえば、国の信用を毀損したことになる。笑い話では済まされない問題である。もしこれを一個人のミスで片付けてしまうようでは、国の威信など有ったもんではない。

 人間は本当にミスをする動物である。本当に良く出来ていて、重要なときほど重大なミスを犯してしまう。医療事故など典型的な例で、日頃普通に行っている業務なのに、その日たまたまその時だけうっかりしてしまう。それで人命が失われてしまうことが起きてしまう。

 更に付け加えるなら、人はミスを忘れてしまう生き物である。何度もミスを繰り返しその都度注意してもいつか時間がたてばそのミスが起こった記憶も忘れ去ってしまう。
 もし、そのミスを機械に頼っても、その設定をする人間がミスをしたり、更にそのチェックをも人間が無視することもある。

 まさに事故は起こるべくして起きている