渡り鳥

 晴れ、気温は低い、5度以下にはなっている。


 7時の空を、南に渡る白鳥の群れが通り過ぎて行った。

 携帯のカメラで映そうとして操作している間に、遥か彼方へと進んでしまいあっという間に消えてしまった。

 丁度逆Ⅴ字の編隊だが、片流れというか先頭から左側が右側の2倍程度の長さで飛んでいた。先頭の白鳥が鳴いているのかそれとも順番で鳴いているのか判らないが、白鳥独特の鳴き声を立てながら飛んでいた。

 しかし、みるみる視界から消えていく速度は相当で時速4、50kmは出ているのではないだろうか。あれだけの速度で飛び続けるためにどれ程のエネルギーを体の中に秘めているのか驚きである。

 渡り鳥は、体の中に方位磁石を持つという。それと同時に太陽の位置と合わせ方角を決めるらしいのだが、生まれながらに持つ生命の神秘ともいえる。

 自分でも方向感覚に優れていると思うのだが、ビルに囲まれた土地や夜などは、方向を失ってしまうことが良くある。そうなった時、軽いパニックに陥り闇雲に歩き体力を消耗することがある。

 そのように道に迷った時の鉄則は、無闇に歩き回らず体力を温存するのが遭難者の鉄則だが、実際そういった状況に陥れば人は誰しも不安になり冷静な行動をとれなくなってしまう。それが人間の弱いところでもある。

 あの渡り鳥の白鳥は、もしそういった場合どう行動するのだろう?動物の本能でやはり待機し、落ち着いたところで行動に移すのだろうか?更にその行動の責任を取るのは矢張りボスの白鳥なのだろうか?

 興味は尽きない。