本日天気晴朗ナレドモ波高シ

 晴れ、気温はマイナス10度くらい。日中はプラスに転じる様だ。


 「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」という言葉は、日露戦争時代の日本海海戦時に、日本艦隊から大本営本部に送られた電文の中の言葉である。

 本日を抜かせば、「天気晴朗ナレドモ波高シ」は当時の天気予報の一節であった。

 天気用語であるので、言葉のとおり天候は晴天であるが波が高いという事を言い表している。しかし、何故この言葉が他の解釈を呼び起こすかと言えば、これからバルチック艦隊と一線を交えるに当たり、日本海軍の心境をその言葉の裏に感じるからである。

 今の日本は、政権が自民党に代り、「アベノミクス」という言葉が先行し、輸出産業が少し息を吹き返した状態にある。それは、円高が円安に振れたため、輸出製品の価格競争力が増したためである。

 しかし、その状況は言葉で言いかえれば、まさしく「天気晴朗ナレドモ波高シ」といえるだろう。輸出産業が息を吹き返し一息ついた状態は、まさしく嵐が過ぎ去った後の晴天というべき状態だろう。これで日本人の多くがすこしこれで安堵感を覚えたことだろう。

 その代りと言っては何だが、徐々に原材料価格が円安のため今までより上昇し、徐々に消費者物価が上がることだろう。それは、デフレと言われた環境を代え、貧富の格差をより一層感じさせるものになるだろう。

 更に、以前の「ジャパン アズ ナンバーワン」と言われた時代と違い、新興国との競争があり、日本が追われる立場にあるという事である。日本が息を吹き返せば、それを追ってきた新興国の経済発展のスピードが鈍化する。

 それは、新たな国際関係悪化の火種になるだろう。昔なら、日本は先進国に追いつく立場だったため、先進国側から色々な圧力を受けたが、それは、自由貿易という名の大義名分を守る国々だったが故、日本にとっては有利な戦いだった。

 しかし、今は違う。日本は、その自由貿易の網を掻い潜ることも辞さない新興国が相手だと状況が変わる。相手がルール無用の試合をけしかけてきても、日本は大人の対応を取ることが求められる。いくら相手が、特許権などという法律を無視してきたとしても、それに対してきちんと法律の枠内で対応するしかないし、相手が産業スパイなどの手を使って企業秘密を盗難したとしても、それに対して他国を罰する方法が無い。それだけ日本が不利な状態にいながら、日本の繁栄のために競争していかなくてはならないのである。

 そういった意味で、この「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」は、今の日本の時代に即した言葉ではないだろうか。この短い言葉に隠された意味を深読みし、色々な解釈を含ませられる短文である。

 人の人生も同じである。一つの事が片付きやれやれと思っていても、やはり次から次へと課題は押し寄せてくる。それをやり過ごすことが人生なのだけれど、中にはその戦いに敗れ戦意喪失したり、リタイヤしていく人も出てくる。まさしく束の間の平和な一時は、「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」である。