持続可能な医療を提供するために

 曇り、気温は5度.昨日の気温は10度を超えなかった.徐々に冬がその姿を見せようとしている.今週末は冬タイヤへの交換が必要だろう.

 

 

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 厚生労働省が9月に発表し話題になった地域医療再編問題.その後の進展は見られないが、池に石を投げ入れた波紋がどのように広がるか様子見の状態である.

 

 日本の医療は、概ね日本国内ならどの医療行為を受けても同一の支払いで済ますことができる.この仕組みは世界的にも優れた制度である.(医師の技量の優劣に差がない前提であるが実際にはその差は大きい)

 

 その医療が超高齢化社会を迎えるにあたり崩壊すると予想されている.一番の問題は、地域格差をなくそうと思えば当然公の負担が増えることになる.

 競争原理の基、医師の偏在を許してきた国がその解決策として医師の養成校を増やす政策を取ってきた.しかし、増えた医師の多くは地方ではなく大都市あるいはその周辺に集まってしまった.どの地域に居ても収入が同じならわざわざ田舎で医師をやろうという人間が少ない結果である.

 

 では地方はどうかというと医師は中々集まらず、医師の給与は増え更に患者はいなくとも病院機能を維持するために職員は必要となり人件費は赤字だろうと黒字だろうと一定の費用は必要になる.赤字のままでは経営は成り立たない.民間病院であれば赤字になれば廃業あるいは撤退しなければならない.しかし、公的病院は赤字になったとしてもその地域の住民の医療を無くすわけにはいかないという理由から赤字を補てんするための補助金が出ているわけである.その補助金の元はその地域に住む人々の収める税金である.

 自分が利用する際の医療費の他に医療を受けなくても自分たちのお金を病院に支払っているのだが、そのことは眼に着きにくいため無視されている.

 

 日本全国すべての場所に平等に医療を提供するには限界がある.その限界は、本来なら市場による競争原理でコントロールされなければならないのだが、それができない場合、公的病院、そして地元自治体ともに借金で身動きできない状態になるまで放置される.どうにもならない状態になって初めて解決策を見出そうとするが、その時点で巨額の赤字を抱えているので結局国が援助するのだろうが、医療費とは別のところで国民に負担が行くことになる.

 

 問題の根本は、今後も持続可能な医療を提供していけるかということに尽きる.最後の最後の何も解決策が出ないところまで物事が進行してしまえばお手上げになるので、その前に処置をする必要がありそれが今回の病院再編なのである.今の時点でも遅すぎるのにこのまま指をくわえて待っていたら国が持たなくなる可能性も出てきたわけである.

 

 国が主張する機能の重複を避け機能を分担するというのは合理的な解決策の一つだろう.公的病院同士なら経営者が同じなのだから話はしやすいだろうということで今回は公的病院が上がったが、本来なら民間病院を含めた医療の再編と機能の重複を避ける政策は必要である.

 

 既に死に体となっているところにお金を注いでも穴の開いたバケツに水を注いでいるようなものである.バケツの穴をふさいでから水を注ぎこまなければ解決されないことが判っているのにである.早急にこれを解決しなければ持続可能な医療は崩壊するのは間違いない.