夏空

低気圧が過ぎ去った後の空は、真夏を思わせる青さだった。澄み切った青の中を雲がすべるように流れていく。

 何時も走るコースの木立の中から、色々な鳥の鳴き声が聞こえる。それは、今まで効いたことの無いようなさえずりを聞かせてくれる。しかし、其の泣き声の主がどこに居るのか姿を見せようとしない。

 木立をすり抜ける風は、頬に気持ちよいが、一端日向に出ると日の光は刺すように肌に照りつける。それを振り払うようにスピードを上げるが、其の光からは逃れることはできない。
 肌を流れる汗、額から落ちる汗、まるで水溜りに飛び込んだ野良犬のような心境だ。体を震わせ其の汗を振り払いたいくらいだ。

 そしてゴールにたどり着き、空を見上げた。そこに広がる青さは、無限に落ちていく空の底であった。