めぞん一刻

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 先週末に古本屋で「めぞん一刻」のワイド版全10巻セットを購入し読んでいる。作品自体は1980年ビックコミックスピリッツで連載開始されたものだから、すでに34年という歳月が経っている。

 若い頃にも、コミック本になってから何冊か購入し読んでいるのだが、既に手元に無く(もしかすると物置の隅にでもしまってあるのかもしれない)今回購入したのである。

 そして、今回購入して判ったのだが3分の1程度しか読んでいなかった。きっとあの頃読むのを途中でやめたのは、その辺りで少しドタバタギャグに飽きてしまい五代君と響子さんがどうなるかということに興味を無くしてしまったのだろうと思う。

 その読み進んでいた前半は、高橋留美子特有のギャグが満載であるのだが、それの繰り返しが主になり主人公の関係が一向に進まなく、途中でこずえちゃんという恋人が出来たあたりから徐々に興味を失って行ったのだろう。更に、あの頃の自分もそれなりに多忙になり本を読んでいる時間も少なくなりつつあった時期と重なる。

 何故、それを読むようになったかと言えばやはりインターネットの検索からである。インターネットをさまよううちめぞん一刻の文字が目に付いた。そういえばこの漫画の結末を知らなかったなと思い調べてみると、予定通り主人公たちは結ばれていた。あの成り行きで結ばれていなければ却って問題だと思うし当然の結果なのだが、その間の紆余曲折についてどういう展開になっていたのか気に成り始めたのだった。

 ネットで注文しても購入可能だったが、近くに古本屋があるのでそこに有れば購入しようと思い立ち出かけるとワイド判の全10巻が並んで置いてあったのだった。早速購入し水曜日の夜中に読み終えさすがに寝不足である。日中は仕事で夜遅くから読み始めるのだから無理もない。当然読み進めていくと途中で止められなくなり午前1,2時になる。それで一眠りして仕事へ行くのだから当たり前である。読み終えた昨日はそのせいで午後10時前には眠ってしまった。

 この本が何故面白いか?是非読んで確かめて欲しいのだが、前半3分の1はギャグ漫画、次の3分の1はラブコメディ、次の3分の1はラブストーリーという構成になっているのだが、話が進むにつれ主人公の2人に肩入れする気持ちが増していくのである。五代君は何処か抜けていて不運を背負った人物で、響子さんは実に魅力的な女性に成って行くのである。

 あれ程不幸を背負った青春を送る五代君が不幸せかというとそうでは無く、周りのキャラが不幸を不幸と思わせないようにしていく。それは、見守るに近いし、主人公たちを破局に向かわせようとするのだが、それが逆に主人公たちの絆を強めるように作用する。とはいっても根底に流れるのはギャグ漫画なので陰湿では無いのだが。

 響子さんも高校卒業と同時に結婚という当時としては珍しい存在でありながら、結婚後半年で主人を無くすという不運の持ち主で、その影を引きづりながら一刻館の住人と付き合っていくのだが、響子さんのお母さんが言うように、学歴も無く、怒りんぼうで、勘違いの多い女性なのである。だから、美貌と才能を持ち合わせた素晴らしい女性としての存在では無く、平凡な女性でしかない。

 しかし、読んでいくと実に男心をくすぐるというか、可愛くて仕方が無くなる女性に成って行く。登場初期は、余のけばさに水商売系かと思わせる登場の仕方をするため、最後の方の可愛さに驚くのである。まあ、これは最初の絵柄と後半の絵柄が代ったという事なのだが、登場人物の成長と共に可愛く綺麗になって行ったという事だろう。その証拠に、一刻館の他の住人は、登場から最後までキャラクター的には変化をしていないからである。

 結局、この漫画は、勘違い、すれ違いの物語で、途中で誤解から何時別れてしまっても可笑しくはない感じで進んでいく。実際の人生なら、どの部分でも終わる可能性があった。特にこずえちゃんが登場してからは、五代君は何時でも響子さんを忘れることができただろう。そういう展開である。

 

 ただそれでは、読者をひきつける事にはならない。この物語は、最初に五代君と響子さんが登場した時から何時2人が一緒に成るかという話なのだから、そこに向かう事は、暗黙の了解として作者と読者が共有する事実なのである。

 だからいくら五代君に困難が訪れようとも響子さんが見放すことは無いというバックボーンがあるから安心していられるのである。

 この物語を、もし連載と同時に読み進めていたら途中で挫折することは無理もないように思えてくる。何故ならこの物語の結末が見えず、最終的に2人が一緒に成ることが判っていながら紆余曲折するからである。この物語を読むのは、今回の自分のように完結したことを了解の上まとめて読む方が正しい読み方だと思う。これを週刊あるいは隔週で読むのは時間の経過が余りにも長すぎるからである。

 事実この漫画は最終的に7年掛けて連載を終えているわけで、当時の時代進行と同じくして物語内でも7年の歳月を刻んだのである。もし時間が有れば読むことをお勧めする。それなりに時代は古いけれど若い人にも読んで損はないマンガと言える。