王位戦第4局 藤井7冠敗れる

 曇り、気温は26度.台風7号は現在北海道の西を進んでいる.時折強い風が吹き台風が通過しているのだろうなという気持にさせられる.

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強い風が吹くことは良くあることだけれども台風の風と普通の風の違いは、やはりその瞬間的な強さだろうと思う.強い風は波打つように強弱を繰り返し一定のリズムで吹くことは無い.更に上空の雲は低層と高層によって流れる方向が異なる.台風の渦は水の流れにできる渦と同じである.水の流れの表面と水の底に近い渦の流れは一定に流れているのではなく向きも速さも同じではない.それが大気中でも起きていると思えば理解できるだろう.

 そして台風7号は幸いに北海道の直撃は免れた.そして北海道以外の地域では既に台風は過ぎ去った過去の話題になっているが、まさに北海道はその台風の影響を受けていることに対してニュースは既に興味を失ってしまっている.ローカルの放送では風の強さに注意を促しているが、何となく危機感はそれ程無いようにも見える.これから進む先にある宗谷地方は温帯低気圧に変わるけれど強風域に入ると思われるため風の被害に注意して欲しいと思う.台風が過ぎ去るにはもう少しかかる.

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 昨日の夜に終局を迎え挑戦者の佐々木7段が勝利した.この局は先手番が佐々木7段で後手番が藤井7冠という形で行われたのだが、前日の対局は普段よりゆっくり差された印象がある.お互い持ち時間が8時間という長い戦いである.そのため何時もより1手毎の考慮時間が長くなる.普通の棋戦なら序盤は自分の構想通り指すのとやはり定石などで考慮時間は短く進んでいく.しかし、藤井7冠はあえて序盤から時間を使い長考する.今まで棋戦を戦ってきたことで得た戦略なのだろうと思うが、この辺りの綾が読み違いを産むのではないかと思ってしまう.

 最近調子が落ちているのではないかと心配するのはその部分である.以前の様な短時間の持ち時間で読みの強さを生かして相手を負かしてきた勢いがこのところのタイトル戦を防衛していくにつれその反発力が失われてしまっているようにも見える.素人が偉そうに講釈を垂れるようで申し訳ないが、手筋を深く読んだからと言って人間には限界がある.相当の優勢状態なら嫁べ読むほど詰みが見えてくるが序盤の戦いで先の手筋をどれだけ読もうとも相手が読み筋以外の手を差せばそこから再スタートを切らなければならない.その辺りの手加減が時には必要ではないかと思う.この第4局も一日目の序盤から長考に沈んだ形となったが、勝利を目指すという戦い方ではなかったのではないかと思う.

 常々インタビューで藤井7冠は将棋の奥深さを極めるという風の言葉を発している.そこにあるのは宮本武蔵が県の道を究めようと修行の道に入ったように藤井7冠もその道に入り込もうとしているのかもしれない.そのため一手の読みがその先の自分の道を変化させることを恐れているのかもしれないと感じる.きっと考えれば考えるほど無限の暗闇が広がりその先にある一筋の光を求めている感じがする.

 AIが将棋において人間を凌駕したと言われ既に人間が考えられないような世界が既に存在する.既にAIが見てしまった将棋の世界に対して人間の叡智でそこに辿りつこうとしている姿がそこにあるように思う.もし、藤井7冠がその縁に辿りついたなら既に人間以外のものに変化しているのではないかと思う.どこかで立ち止まり辿りつけない永遠に気付くことがあるのだろうか?

 この対局でも重要な終盤の読みで見落としがあったと対局後藤井7冠は答えている.それなら序盤で消費した持ち時間を最後に持ってくればと素人ながら思うのだが、それも全て彼の心の中に有るのだろう.