裁量労働制

 曇り、気温はマイナス2度。昨日の日中の気温が最高でプラス8度位になり、道路の踏み固められた雪が融けて深い轍になってしまった。夜中に除雪車が入りある程度解消したが、雪解けの水がすっかり凍ってしまい歩きにくいことこの上ない。

引用 東京新聞http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2018030590070350.html) 

裁量労働制を対象外の社員に違法適用していたとして昨年、厚生労働省東京労働局の特別指導を受けた不動産大手の野村不動産(東京)で、違法に適用されていた五十代の男性社員が二〇一六年九月に自殺し、長時間労働による過労が原因として労災認定されていたことが関係者への取材で分かった。把握された残業は最長で月百八十時間超あった。労働局は昨年十二月に特別指導を公表したが、調査のきっかけになったとみられる社員の自殺は明らかにしていない。

 政府は裁量労働制の拡大を今国会に提出予定の働き方改革関連法案に盛り込む方針だった。安倍晋三首相は国会で「働かせ放題にならないか」と追及された際、野村不動産への指導を具体例に挙げ「制度が適正に運用されるよう今後とも指導を徹底する」と答弁していた。

 今国会で話題の裁量労働制に関するニュースである。

 裁量労働制とは、言うなれば個人で結ぶ仕事請負契約のようなものである。一つの成果に対して対価を支払うため、短時間で仕事が終わっても長時間の作業が必要でも報酬は同じということになる。

 一般に、時間で管理しにくい職種である弁護士やデザイナー、研究職などがこれに当たる。例えば研究職など、成果を出すために長時間の実験が必要な場合、勤務時間で縛られたら結果の確認ができない場合などがそれである。


 国会で議論されていた「働き方改革」に関連して裁量労働制の拡大を目指していたがこれを除外することが決まっている。

 裁量労働制は、労使間できちんとした契約を結ぶことができれば双方にとって利益を生むことができる。契約が労働者にとって不利になることが予想されるため反対するものが存在するのはしかたがないのだが、何故、労働者側は自分たちに有利になるような対案を示さないか甚だ疑問である。

 上にも書いたように個人請負のようなものであるから、能力があり速く仕事をこなすことができる労働者ならこの裁量労働制は魅力的に映るだろう。

 その場合問題となるのは、能力が不足した労働者の存在である。あるいは有能でも病気やけがでそちら側に回るかもしれないということもある。そうなった場合、労働者間にも格差が生じるが、実際のところ今の多くの職場でも人事考課が行われ給与に差が付き始めているのも事実である。

 会社としても与えられた仕事をこなせない労働者の存在は不利益になる。共に働く労働者にとっても会社の業績が上がらなければ共倒れになる危険性もあるわけだから、最低保障と怪我や病気の時の給与補償などの手当てが充分にあれば裁量労働制はありだと思う。現実に、他の社員の仕事を引き受けて残業時間が延びるということも実際にあるわけだから、現実に制度が追いついていないのも事実である。

 これは例えだが、医師は裁量労働制の範疇に入っていないが、有能な医師の場合、月に数十件の手術と外来診療をこなし常に病院に待機しているような状態にあるが、反対にそうでは無い医師は、定時に働き、それ程仕事をしない場合でも同じ評価をされている場合もある。その場合、労働時間は同じでも仕事の質は異なるわけであるから平等な評価がされても問題がある。

 できるなら、裁量労働制の範疇に含めた契約であれば、その労働の質に応じた働き方の選択も可能になってくるはずである。

 しかし、問題はそういった働き方にブレーキを掛けることが正しいという意見もあながち否定はできない部分もある。一度そういった制度を作れば悪用する事業主は数多く出てくる可能性があるからである。今でもブラックと呼ばれる企業が存在し、労働者ん人権を無視するような環境が存在すると、長時間労働を正当化させる要因になる可能性が高くなる。

 現実問題、時間外手当が付かないような隠れ残業があることは周知の事実だし、労働者が裁量労働制に移行すれば、時間外労働手当てが正当に支払われない可能性があるし、それにより労働時間が増えれば雇用需要が減る可能性も出てくる。

 この辺りも、未来が予測されれば良いのだが、今後AIなどの進化は、専門家と呼ばれる職種を淘汰しかねない。そうなれば今まで職があった人間も不要になりかねない。会社が社員と仕事請負契約を結ぶような関係になると簡単に解雇されることも考えられる。

 この問題簡単に解決しなさそうであるが、本当なら労働者側が提案すべき法律だと思う。今後の働き方が今までのままでは将来性が無いのは事実である。雇用の不安を抱えて仕事をするよりも裁量労働制を逆に利用するような働き方を模索するほうが、理にかなっている。

 そういう意味で筋が悪いやり方で、安倍憎しで自分たちの未来を狭めていることに気付くべきだと思う。野党のやり方は却って労働者の選択肢を狭めている可能性が高い。